『フリーレン』は「理想のアニメ化」? ファンが絶賛するアニオリ描写とは
TVアニメ『葬送のフリーレン』は、たびたびアニメオリジナル描写がファンから絶賛されています。一体、どのような描写が評価されているのでしょうか。
ヒンメルの葬儀でフリーレンが泣くタイミングはなぜ違った?
2023年の秋から2クール放送されているTVアニメ『葬送のフリーレン』は、同名マンガ(原作:山田鐘人、作画:アベツカサ)を原作とし、原作の優しくもはかない雰囲気を見事に再現しています。その一方で、原作の雰囲気を壊さずに優れたアニメオリジナル描写も加えられ、ファンからは「理想のアニメ化」ともいわれています。
たとえば、第1話「冒険の終わり」でともに旅をした人間の勇者ヒンメルが亡くなり、エルフの主人公であるフリーレンが涙を流すシーンでは、原作とアニメで泣くタイミングが違います。
原作ではヒンメルの葬儀で涙を見せないフリーレンに対し、周囲の人が「薄情だね」とやじを飛ばしました。フリーレンはエルフと人間の寿命の違いから人間へ無関心だったため、やじを聞き「…だって私、この人の事何も知らないし…」といいます。しかし、直後に涙をこぼし「…なんでもっと知ろうと思わなかったんだろう…」と後悔しました。
一方、TVアニメでは同じように「薄情だね」といわれてもフリーレンは涙を流しません。フリーレンはやじを聞いた後にヒンメルを見て、何かに気付いた表情を見せます。その後、葬儀を終えてヒンメルを埋葬する時にフリーレンは涙を流しました。
この涙を流すタイミングの違いについてアニメ監督の斎藤圭一郎氏は「TVアニメ『葬送のフリーレン』公式スターティングガイド」(小学館)にて、人は気持ちを整理する間があったうえで涙を流すという考えや、フリーレンの涙をやじに対する言い訳にしたくなかったと語っています。
また、第3話「人を殺す魔法」では、かつてフリーレンが倒しきれず封印したクヴァールとの戦いが描かれ、この戦いでもアニメオリジナル描写が見られました。原作では終始地上で戦うのに対し、TVアニメでは戦闘の途中でフリーレンが飛行魔法で空を飛び、魔法を放ってクヴァールを倒したのです。
この描写について斎藤監督は、同じく「公式スターティングガイド」にて、人類が空を飛べるようになったのはクヴァールが封印された後なので、飛行魔法を描くことで第3話のテーマである封印されて時間が止まっていたクヴァールと、時間が進み発展している人間を強調したと語っています。
ほかにも、ヒンメルがフリーレンへ送った鏡蓮華の指輪も、TVアニメでは原作より早く描かれ、鏡蓮華の指輪を送る姿が描かれた第14話「若者の特権」へ向けた伏線となっていました。
鏡蓮華の指輪は、原作ではヒンメルがフリーレンへ指輪を送るときに初めて描かれましたが、TVアニメでは第1話から指輪を眺めるフリーレンが描かれています。さらに、第12話「本物の勇者」でもフリーレンは指輪を手に取り、眺めていました。
このようにアニメオリジナル描写は伏線になっているだけでなく、鏡蓮華の指輪が繰り返し登場することにより、重要な存在であることがより伝わるものとなっています。