地上波放送から10年以上… 隠れた「ジブリ」の名作3選「美麗すぎ」「エモい」
アニメ映画界の巨匠が最後に制作した2作

●『ホーホケキョ となりの山田くん』
高畑監督による『ホーホケキョ となりの山田くん』は1999年に公開されたジブリ作品で、「金曜ロードショー」では2000年に放送されて以降、地上波放送はありません。
同作はいしいひさいち先生によるマンガ『となりのやまだ君』を原作にしており、山田家の日常をオムニバス形式で構成している作品です。夫婦に息子、娘、そして姑に1匹の犬という至って普通な一家が登場するなかで、平凡だけどシニカルでブラックなユーモアが散りばめており、さらに忙しなく生きる現代人の心の重荷がすっと軽くなるような言葉もたくさん出てきます。
個人的に記憶に強く残っているのは、小学校の先生が習字の見本で「適当」という文字を書いて「適当! 適当にね」と言い放つ場面です。映画館で視聴した当時は小学生でしたが、いま改めて見ると、当時よりも胸に響く印象があります。
実際に、ファンからは「高畑監督の理想である『生きていく支えとなるアニメ』を体現した力作」「年を重ねたからこそ分かることが多く、普通に泣いてしまった」などの意見があげられていました。
優しいタッチで描かれる登場人物と、心にじんわり染み渡る山田家の魅力を、再びお茶の間で家族と観たいものです。
●『かぐや姫の物語』

『となりの山田くん』から10年以上も間が空いてから制作された高畑監督作品『かぐや姫の物語』は、彼のアニメ映画監督人生のなかで最後の作品となりました。本作は2018年5月の「金曜ロードショー」での放送が最後のため約6年間、放送されていません。
平安時代に誕生したとされる『竹取物語』を原作にした同作は、「なぜ地球に生まれて月に帰っていったのか?」という「かぐや姫」の謎を描いています。晩年の作品のためか、登場するキャラや風景の絵のタッチは、これまでの高畑作品なかでも特に力強く、視聴後には「ジブリ史上最大の野心作」といわれている理由が分かるでしょう。
ちなみに、今も同作の公式サイトは残っており、そこの「監督の言葉」では「このような物語に、いわゆる今日性があるかどうか、じつのところ、私にはわかりません。しかし少なくとも、このアニメーション映画が見るに値するものとなることは断言できます。なぜなら、ここに結集してくれたスタッフの才能と力量、その成し遂げた表現、それらは明らかに今日のひとつの到達点を示しているからです」と述べていました。
高畑監督のラスト作品なだけあって、ネット上では「『となりの山田くん』から続く、水彩日本画の表現のレベルがさらに上がっていた。そして、何よりも演出が素晴らしい」「正直、当時観たときは良さが分からなかったけど、改めて観たときは大人になったのか、気付いたら号泣してた」「高畑作品として一生語り継がれるべき」など感動の声が多くあがっています。
「金曜ロードショー」で再度放送されるかは分かりませんが、アニメーション映画に人生を捧げた巨匠の晩作なので、観ておいて損はないのではないでしょうか。
(LUIS FIELD)