TVじゃ放送できねーよ! 改変前が濃厚すぎた天才・石川賢のマンガ版『ゲッターロボ』
スケールもエグさもインフレしていく「ゲッターロボサーガ」
完全続編の『ゲッターロボG』でも、キャラクター設定はリセットされておらず、隼人が過激派リーダーという過去も引き継いでいます。第1話から過激派がパトカーを襲撃しており、従兄弟の「竜二」が隼人をメンバーに連れ戻しに来るという展開でした。
実は、竜二は新たな人類の敵「百鬼帝国」に改造されており、仲間たちもすべて機械の身体に改造済みです。もはや後戻りできなくなった竜二と元の仲間たちが巨大ロボ「魔王鬼」に合体し、「ゲッターロボG」は大苦戦しながらも隼人+「ゲッターライガー」の超スピードでこれを撃破します。初っぱなから主役ロボはボロボロ、後味の悪さも半端ではありません。
ほか、高層ビルでのパーティに招かれたものの敵のわな、閉じ込められた一般客が次々と殺されるなか、ゲットマシンが駆けつけて……という、早すぎた『ダイ・ハード』的な話もありつつ、前作よりも短いために、いきなり最終編「ゲッター最後の戦い!」に突入します。
クライマックスの「超巨大な竜型ロボ『ウザーラ』に乗り、腕組みして登場するゲッタードラゴン」が広く知られますが、そこに至るまでの経緯にはエグいものがあります。
そもそもウザーラは古代アトランティス人の守護神であり、生き残りのアトランティス人はゲッターチームを捕らえて脳を移植しようとします。ところが、そこに百鬼帝国の潜入工作員が殴り込み、アトランティス人は全滅してしまいました。その遺言としてウザーラが竜馬たちに託されたわけですが、結果的に命の恩人となった百鬼の連中を皆殺しにするゲッターチームが素敵です。
その後もまだまだ、「ゲッターサーガ」はつむがれていきました。TVアニメと同時期に連載された石川賢版『ゲッターロボ號』は、展開が全く異なるうえに、主役ロボだった新たな「ゲッターロボ」(玩具版は3機が合体、3形態に変形するスゴさ)は終盤にリストラされて、マンガ版オリジナルの「真ゲッターロボ」が何もかもかっさらっていきます。具体的には火星に、吸収した流竜馬らと一緒に飛んでいってしまいました。
さらに『真ゲッターロボ』や『ゲッターロボ アーク』へと続き、最後の「アーク」は掲載誌の『スーパーロボットマガジン』(双葉社)が廃刊となったため「第1部・完」となり、やがて原作者が逝去されたために未完となっています。
初代が始まってから大風呂敷を広げ続け、一度も閉じることなく銀河を超えて広げていった石川賢先生がもっと長生きされていたなら、人類はとんでもない地平に連れて行ってもらえたと信じて疑いません。
(多根清史)