『ドラゴンクエスト』初期三部作の心に刻まれるトラウマ しんどさもスパイス…なの?
HD-2D版『ドラクエ3』が注目を集めるなか、オリジナルのファミコン版について振り返ります。美しい思い出に包まれていても、よくよく振り返ると非常にしんどい思いもしたような……それこそが初期三部作の魅力かもしれません。
強烈だった「襲い来るマンドリルの恐怖」…荒削りゆえのスリル!
HD-2D版『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』が発売されました。2025年には『ドラゴンクエストI&II』もHD-2D版が発売予定で、初期ドラクエ3部作のそろい踏みとなります。
初期ドラクエは、非常に難しかったRPGというジャンルを「誰もが時間をかけて経験値を稼ぎレベルアップすれば、必ずクリアできる」に転換させた存在です。が、それでも荒削りであり、なまじプレイ人口が多かっただけに「トラウマ量産装置」になった面もありました。
まず初代『ドラゴンクエスト』は一本道で難度もそう高くなく、ガッツリやれば1日以内にクリア可能です。が、ラスボスの「りゅうおう」の「みかたになれば せかいのはんぶんを(プレイヤー名)にやろう」というワナは強烈でした。
一応は2回、念を押されるものの、承諾すれば画面がフリーズしてリセット以外、受け付けなくなるのです。その後、(フリーズの前に)りゅうおうの教えてくれた「ふっかつのじゅもん」を入力すると、スタート直後のレベル1へ戻された上に、最初にもらえる宝箱もありません。
後のスピンオフゲーム『ドラゴンクエストビルダーズ アレフガルドを復活せよ』は、まさに「はい」と答えてしまった世界線です。そこでは「セカイノハンブン」と書かれた建物に閉じ込められた元勇者が、パンツ一丁で錯乱しているというすさまじいオチを描いていました。
次に『ドラゴンクエストII 悪霊の神々』は、逆にトラウマにならない箇所を見つけ出しにくい鬼畜っぷりで知られています。
そもそも序盤の「ムーンペタ」近くで、「サマルトリアの王子」を一撃で葬れる「マンドリル」が群れで出現しまくることがぶっ壊れています。謎ときも「すいもんのかぎ」が見つけにくいわ、どこで使うか分かりづらいわで地獄でした。
そして終盤の「ロンダルキアへの洞窟」は、凶悪モンスターが勢ぞろいします。「ザラキ」と「ルカナン」を繰り返す「ブリザード」の群れや、「メガンテ」使い「デビルロード」など、どんだけ殺意が高いんでしょう。しかも、落とし穴だらけのフロアや、無限ループのフロアもあります。
その先に待つラスボスも「ベホマ」使い、つまり「今まで与えたダメージ、ぜんぶナシ!」であり、新手の拷問かと思えました。
最後に『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』は、バランス調整もうまくいっており、戦闘で苦しむ箇所は減っています。
それでも難所として記憶されるのが「ピラミッド」でしょう。「ひとくいばこ」は圧倒的な攻撃力と「つうこんのいちげき」、さらに「あまいいき」でパーティの動きを封じてくる凶悪さです。武闘家の最強武器「おうごんのつめ」が隠されているものの、入手すればエンカウント率が激増し、魔法が無効化された階層のため「リレミト」で脱出もできません。
もっとも、それすらかすむほどの強烈なトラウマは、「おきのどくですが ぼうけんのしょは きえてしまいました」に違いありません。当時の最新技術、バッテリーバックアップのおかげで「ふっかつのじゅもん」(『ドラクエ2』の場合、最大52文字)の書き写しを間違える地獄がなくなったと思ったらコレでした。
こうして振り返ると、初期『ドラクエ』シリーズの思い出はトラウマ比率が非常に高く、「吊り橋効果」かもしれません。HD-2D版の『ドラクエ』にも、ほどよいトラウマが望まれそうです。
HD-2D版『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』:
(C)ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SPIKE CHUNSOFT/SQUARE ENIX
(多根清史)