人間的に可能なの? 「休載ゼロ」で連載を走り切った漫画界の鉄人たち
漫画家は、夢を売る仕事であると同時に過酷な職業です。特にマンガの週刊連載は「人間のやる仕事ではない」と言われるほどで、確かに毎週締め切りが来るプレッシャーに耐えながら、何時間も部屋にこもる生活は、精神的にも肉体的にもキツイものがあるでしょう。しかし、そうした週刊連載を「休載ゼロ」で走り切った強者たちもいます。
1度も休まなかったのは規則正しい生活ゆえ?
![画像は、470点以上の『FAIRY TAIL』イラストが収録された画集『MAGNOLIA-FAIRY TAIL ILLUSTRATIONS 1+2+α-』著:真島ヒロ(講談社)](https://magmix.jp/wp-content/uploads/2025/02/250210-kyuusaizeromanga-01-214x300.jpg)
「基本的に週刊連載って人間のやる仕事じゃないから!」「脳を週刊用にチューンナップされた兵士がやる仕事だから!」
これは、『【推しの子】』に登場する漫画家「吉祥寺頼子先生」のセリフです。温和な人柄で知られる頼子先生にここまで言わせるほど、マンガの週刊連載は過酷を極める仕事として知られています。しかしなかには一度も休載を挟むことなく、完結を迎えた「鉄人」のような漫画家もいました。
たとえば最近話題になったのが、『夜桜さんちの大作戦』の権平ひつじ先生です。2025年1月20日発売の「週刊少年ジャンプ」8号をもって、約5年半の歴史に幕を閉じた同作は、2019年の連載開始から一度も休載したことはありません。完結を迎えた際には、「約5年半休載なしの連載お疲れ様でした」「一度も休載したことないのホント凄すぎる」といった声がネット上に飛び交いました。
それよりも短い期間ですが、初の連載作品にして、休載ゼロで完結を迎えたのが『鬼滅の刃』です。アニメ化を機にファンを増やし、累計発行部数は1億5000万部以上、劇場版「『鬼滅の刃』無限列車編」は興収日本歴代1位など、社会現象と言われるまで人気に火が付き、途中からは連載以外の仕事も多く抱えていたことでしょう。それでも原作者の吾峠呼世晴先生は全205話を休まずに描き切り、4年3か月の連載を全うしました。
また『RAVE』や『FAIRY TAIL』の作者として知られる真島ヒロ先生は、1998年のデビューから今まで一度も休載したことがありません。しかも『FAIRY TAIL』連載時には2週連続で3話掲載というハードなスケジュールをこなし、ときに3作品同時連載を抱えていた時期もありました。てっきり仕事に追われる日々なのかと思いきや、大好きなゲームの時間もしっかり確保しているというから驚きです。マンガ界の鉄人とは、まさに真島先生のことを言うのではないでしょうか。
そして、この手の話題で触れないわけにはいかないのが『こちら葛飾区亀有公園前派出所』でおなじみの秋本治先生です。同作は「週刊少年ジャンプ」で1976年から2016年までおよそ40年間連載されており、驚くべきことに1度たりとも休載していません。
2019年に出版された『秋本治の仕事術 「こち亀」作者が40年間休まず週刊連載を続けられた理由』によると、秋本先生はデビュー当初から午前9時には仕事を始めていたそうです。「アトリエびーだま」を設立してからも習慣は変わらず、アシスタントたちも午前9時から午後7時までの勤務体制。こうした規則正しい生活を続けていたことが、長期連載維持の秘訣だったのかもしれません。
ちなみに週刊連載ではないものの、「別冊少年マガジン」で連載されていた『進撃の巨人』も、諫山創先生のデビュー作にして、休載ゼロで完結を迎えた作品です。正確にはコロナ禍の影響で雑誌そのものが休刊になったことはありますが、それを除けば約11年半にわたる連載を休載ゼロで走り切ったことになります。
しかしその道程は常に順調だったわけではなく、2018年放送の『情熱大陸』で諫山先生が取り上げられた際には、連日徹夜しながらネーム仕上げに苦労する様子が映し出されていました。それでも毎回締め切りを守って原稿を提出する……そうした並々ならぬ努力によって、同作の連載は続けられていたのです。
(ハララ書房)