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『アンパンマン』の忘れがたい1曲 1番強烈な歌詞が「修正」されていた! 理由は?

「♪おいしいパンをつくろう」で始まる『アンパンマン』の楽曲、ありますよね? いまは、あの曲の歌詞が一部、変更、修正されていることをご存じでしょうか?

いまの子供たちは「死んでしまう 死んでしまう 死んでしまう」を知らない?

「生きてるパンをつくろう ~Brand New ver.」が収録された「それいけ!アンパンマン ベストヒット’23」(バップ) (C)やなせたかし/フレーベル館・TMS・NTV (C)やなせたかし/アンパンマン製作委員会2022
「生きてるパンをつくろう ~Brand New ver.」が収録された「それいけ!アンパンマン ベストヒット’23」(バップ) (C)やなせたかし/フレーベル館・TMS・NTV (C)やなせたかし/アンパンマン製作委員会2022

 長年愛されるアニメ『それいけ!アンパンマン』(原作:やなせたかし)のなかで、このような歌詞の曲を覚えていないでしょうか。

「♪おいしいパンをつくろう 生きてるパンをつくろう」

「ジャムおじさん」と「バタこさん」が、一生懸命パン生地をこねている映像とともに思い出された方も多いでしょう。曲名は「生きてるパンをつくろう」で、作曲はいずみたくさん、そして作詞は原作者であるやなせたかしさんが担当しています。今回、注目すべきは曲の終わりの歌詞です。こちらは

「どんなえらい人だって 食べずにいれば 死んでしまう 死んでしまう 死んでしまう」

 と、強烈そのものでした。ジャムおじさんとバタこさんが「死んでしまう」を連呼する、幼心を揺さぶるには十分すぎるパンチラインです。やなせさんの戦争体験が色濃く反映されているのでしょう。

 ところが、筆者が昨年「アンパンマンこどもミュージアム」を訪れた際、ショーで流れたこの曲の歌詞が変更されており、大いに驚きました。当然ながら子供たちは特に違和感はないようです。改めて使用されている歌詞の、該当部分を見てみましょう。

「どんなえらい人だって 食べずにいれば 生きられない 生きられない 生きられない」

 そう、変更されていたのはあのパンチラインの部分でした。「死んでしまう」が「生きられない」に修正されています。

 なるほど意味合いは近いですが、響きはずいぶんマイルドになりました。仮定のうえでの否定、ということで一聴での伝わりやすさが若干下がった可能性はありますが、いずれにせよ「食」がいかに生死に直結しているかを伝えてくれる歌詞であることに、変わりはありません。

 とはいえ、なぜこのような変更がなされたのでしょうか。調べてみると、変更されたバージョンのCDが発売されたのは2011年のことでした。曲名も、「生きてるパンをつくろう~Brand New ver.」となっています。

 この「Brand New ver.」は、2011年7月2日公開の劇場版『それいけ!アンパンマン すくえ! ココリンと奇跡の星』で初披露されました。本作は東日本大震災が発生後の公開ということで、被災された方々に配慮した結果と考えるのが妥当でしょうか。

 作詞のクレジットは変わらず「やなせたかし」であることを鑑みると、その可能性は高そうです。なお、この歌詞変更の経緯についての詳細を制作会社のトムス・エンタテインメントに問い合わせましたが、希望期日内での回答はもらえませんでした。

 先述の通り、確かに「死んでしまう」の方が強烈なインパクトを残すものの、現行の「生きられない」バージョンであっても、そこに内包されているメッセージは変わっていません。それを子供らに伝えるのは「アンパンマン」でなく、すっかり大人になった私たちなのです。

(片野)

【画像】え…っ?「強烈な歌詞」が変わったのはいつから? コチラが新しい「生きてるパンをつくろう」が使われたアンパンマン映画です

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