「全長140m」巨大ガンダム! デンドロビウムは「プラモ化されない」から生まれた?
ガンダムシリーズ屈指の人気メカである、ガンダム試作3号機「デンドロビウム」。元スタッフが明かす、意外な誕生秘話とは。
元スタッフが明かす「デンドロビウム」誕生秘話

『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』は、1991~1992年にバンダイビジュアル(当時)から全12巻(全13話)のOVAとして発売され、同92年には劇場用アニメ『(同)ジオンの残光』としても公開された、ガンダムシリーズのなかでも、いまもファンの間で高い人気を誇る作品です。
物語は、特にハイティーン以上で重厚な物語を好む人々を意識したもので、緻密な設定や当時としては圧倒的な作画力で、初期ガンダムからの厚いファンを唸らせたといいます。
特に、入念に練られたメカ設定やデザイン、モビルスーツ戦は圧巻。登場したモビルスーツに魅せられた方も多いかと思います。
なかでも人気が高いのが、本作オリジナルの3機のガンダム、試作1号機ゼフィランサス、試作2号機サイサリス、試作3号機デンドロビウムです。特に3号機デンドロビウムは、全長140mというガンダムとしては破格な大きさで、アームド・ベース・オーキスという巨大な戦闘用ユニットの中にモビルスーツの人型のコア、ステイメンが収まっているという、それまでにない設計になっています。
そこで、当時現場でこうしたシステムや設定開発などを担当していた元スタッフに話を聞いてみたら、面白い裏話が出てきましたのでご紹介します。
『0083』は、当時のバンダイグループで主に映像販売を行うバンダイビジュアル発注で作られたOVAでした。つまり、あくまでも商品は映像なので、いかにすごい映像(物語)を作るかが勝負だったのです。
この物語のなかに「ガンダムは3機作られている」という話が出てきます。だからといってスタッフ側は、3機全てが全く違ったものとして作るとは思っておらず、3号機のコアには1号機を使うつもりだったそうです。しかし、実際は別物として作らねばならないと知り、どうせそうなら映像だからこそ登場させられる「スゴいもの」を出してやろうと考えたのがデンドロビウムだったのです。
当時のいわゆるガンプラ、特にモビルスーツのあまりにも大きなものは商品化できないという常識がありました。しかし、本作ではそれを心配する必要は無いのですから、普段はできないことをしてやろうという気概が、あのデンドロビウムという形になったといってもいいかもしれません。
『0083』はそのタイトル通り、ガンダム世界の「宇宙世紀」85年の物語である『機動戦士Zガンダム』の2年前。第1作「機動戦士ガンダム」との間をつなぐ物語として作られています。それゆえ、後の『Z』に登場する「スーパーガンダム」につながっていく開発実験機がデンドロビウムという想定がなされているのです。そういわれると、なるほど、まだ前段階の機体なのであの巨大さなのだという納得もできます。
こうして人気となった『0083』に、結果的に、バンダイ本体も乗らぬワケがありません。結局は、プラモにならないからこそできたはずのデンドロビウムも後にプラモ化(しかもHG)され、スタッフもファンもたまげたというオチがついてしまったんだと、スタッフは笑っていました。
(風間洋(河原よしえ))
【著者プロフィール】
風間洋(河原よしえ)
1975年よりアニメ制作会社サンライズ(現・バンダイナムコフィルムワークス)の『勇者ライディーン』(東北新社)制作スタジオに学生バイトで所属。卒業後、正規スタッフとして『無敵超人ザンボット3』等の設定助手、『最強ロボ ダイオージャ』『戦闘メカ ザブングル』『聖戦士ダンバイン』『巨神ゴーグ』等の文芸設定制作、『重戦機エルガイム』では「河原よしえ」名で脚本参加。『機甲戦記ドラグナー』『魔神英雄伝ワタル』『鎧伝 サムライトルーパー』等々の企画開発等に携わる。1989年より著述家として独立。同社作品のノベライズ、オリジナル小説、脚本、ムック関係やコラム等も手掛けている。
2017年から、認定NPO法人・アニメ、特撮アーカイブ機構『ATAC』研究員として、アニメーションのアーカイブ活動にも参加中。