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「ガンダムのアタマのバルカンはバルカンじゃない←せいかい」…何をいっているのか?

アムロの駆った「RX-78-2 ガンダム」は、頭部に2門のバルカン砲を備えます。ところが実のところ、あれはバルカン砲ではないのだそうです。「バズーカのようなもの」とも。どういうことでしょうか。

バルカンじゃなかったら何だというのか?

アタマのツノの両脇にある黄色い穴が内蔵機関砲の砲口。「ROBOT魂〈SIDE MS〉RX-78-2 ガンダム ver. A.N.I.M.E. ~リアルマーキング~」(BANDAI SPIRITS) (C)創通・サンライズ
アタマのツノの両脇にある黄色い穴が内蔵機関砲の砲口。「ROBOT魂〈SIDE MS〉RX-78-2 ガンダム ver. A.N.I.M.E. ~リアルマーキング~」(BANDAI SPIRITS) (C)創通・サンライズ

『機動戦士ガンダム』に登場する「RX-78-2 ガンダム」の、「ビームライフル」や「ビームサーベル」といった先進的な武器のなかにあって、頭部左右に1門ずつ計2門搭載された「60mmバルカン砲」は比較的、現実の兵器に近い存在として描かれています。しかし、この「バルカン」という名称が正確かどうかという点については、軍事的な視点から見直す余地があるといえるでしょう。

 まず、「バルカン」という名称の由来についてですが、現実世界における「バルカン」は、アメリカのゼネラル・エレクトリック社によって開発されたM61「バルカン」機関砲を指します。この兵器は航空機搭載用として1950年代に開発され、初めてこれを採用したのはF-104「スターファイター」でした。その後、F-4「ファントムII」、F-15「イーグル」、F-16「ファイティング・ファルコン」、F/A-18「ホーネット」、F-22「ラプター」といったアメリカ製主力戦闘機に搭載され続け、現代でも航空兵器のスタンダードとして君臨しています。

 M61「バルカン」は6砲身の「ガトリング」式機関砲です。ここで「バルカン」と「ガトリング」の関係について整理しておきましょう。「ガトリング」とは、19世紀にリチャード・ジョーダン・ガトリングによって発明された、手回し式で多砲身回転式の機関銃を指し、後世こうした機関銃を「ガトリング」と呼ぶようになります。そしてこの技術を航空機搭載用に大型化、電動化したものがM61「バルカン」です。

 つまり、「バルカン」とは特定の兵器(M61)の固有名称であり、回転式機関砲全体としては「ガトリング」と呼ぶのが正確であるといえ、アメリカや旧ソ連の戦闘機には「バルカン」以外の「ガトリング」が搭載された機種も多数、存在します。

「ガトリング」の最大の特長は連射速度を大幅に向上させることができることにあります。M61「バルカン」の発射速度は標準で分間6000発(100発/秒)にも達し、通常の1回の射撃は0.5秒間であり、つまり1回の射撃でショットガンのように極めて高い弾幕(約50発)を張ることが可能です。

「ガンダム」作品において、兵器の名称が現実とは異なる使われ方をしている例は「バルカン」だけではなく、「ハイパーバズーカ」も同様です。「バズーカ」とは本来、第二次世界大戦中にアメリカ軍が開発した対戦車ロケットランチャー、M1「バズーカ」の固有名詞でした。これがあまりにも有名になったため、ロケットランチャー全般を指す一般名詞として誤用されるようになっています。

「バズーカ」同様に「バルカン」の名が広く知られたことで「バルカン砲=回転式機関砲」のイメージが一般化し、それがガンダムの設定にも影響を与えたのだろうと考えられます。

 ガンダムの「バルカン」「バズーカ」は、厳密には「バルカン」「バズーカ」ではありませんが、それを気にしすぎるのも野暮な話かもしれません。「過去の兵器の名声にあやかって同じ名前を襲名した」と解釈することで、世界設定上の矛盾点も解消されます。

(関賢太郎)

【えっ…こんなの内蔵してんだ】こちらが空自で採用されている「バルカン砲」です

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