話はキツいが… 美麗な作画で沼にハマる、衝撃マンガ3選
かつて一世を風靡した「ガロ系」に代表される、美しくもグロテスクな世界観は人びとを魅了してやみません。ときが経ち、いまや数え切れないほどのマンガが存在しますが、ガロ系にとどまらず、美しさとグロテスクが共存する作風はさまざまな形でファンを増やしています。
伝説の演劇作品をマンガ化

度が過ぎた暴力や悲劇は、たとえフィクションであっても心が締め付けられるものです。しかし、それを補って余りある作画や表現の美しさで、読者に強烈なインパクトを残したマンガ作品がありました。
●『ライチ☆光クラブ』
1980年代にカルト的な人気を誇った劇団「東京グランギニョル」は、短い活動期間にかかわらず鮮烈な作風で後世に語り継がれています。その戯曲のひとつをマンガ化したのが、古屋兎丸先生の『ライチ☆光クラブ』です。
町はずれに作られた秘密基地「光クラブ」では、帝王として君臨する「ゼラ」を筆頭に9人の少年たちが機械の開発に取り組んでいました。ある日、「ライチ」と名付けられた人型ロボットが完成したことをきっかけに、少年たちの結束は少しずつ崩れていきます。
10代の少年たちが抱える狂気と愚かさを前面に押し出した作品で、キャラクター造形に加え、耽美主義を掲げる少年たちが織り成す退廃的な美しさがファンを魅了しました。また、そうした美しい少年たちによる男性同士の愛憎劇も大きな見どころです。
他方でグロテスクさも突出しており、眼球をつぶしたり内臓を引きずり出したりと、ショッキングなシーンが数多く描かれています。特にゼラの末路は悲惨で、美しさを説いてきた彼にとって皮肉ともいえる最期を迎えました。
●『ブラッドハーレーの馬車』
『無限の住人』『波よ聞いてくれ』などの原作者として知られる沙村広明先生の作品で、『ブラッドハーレーの馬車』もまた熱く支持されている作品です。
物語の舞台となる国では、多くの少女たちが資産家であるブラッドハーレー家の養女になることを夢見ていました。というのも、養女になれば大きな歌劇団に入団できるとされていたからです。しかし劇団員の総数と、これまで養女に出されてきた孤児の数は一致しません。
実は養女たちは歌劇団に入団するのではなく、ある恐ろしい計画のために収集されていたのです。国の混乱を防ぐため、凶悪犯罪者たちの性的欲求や破壊衝動を抑える人柱として捧げられるのが、ブラッドハーレー家の養女たちでした。
まったく救いのないストーリーで、作中では少女たちへの暴行が何度も繰り返され、悲しい結末を迎えます。「軽い気持ちで読んだことを後悔してる」「精神が健康な時でないと読めない」という感想もあるほど、読むのに相当な覚悟が必要なマンガです。
●『ジェノサイダー』
マンガ好きのなかには、表紙買いをする人も珍しくありません。しかしキュートな表紙につられた結果、想像以上にハードなストーリーに打ちのめされるケースも起こり得
ます。その例となるひとつが『ジェノサイダー』(原作:宮崎摩耶、作画:秋吉宣宏)です。
主人公で女子大生の「ナツミ」は、半グレ集団のなかで流されるまま、美人局などさまざまな犯罪に手を染め、ついには中学時代からの友人である「リカ」を酷い目に遭わせてしまいます。リカの父親が犯人たちへの復讐を誓ったことで、ナツミの運命もまた大きく変わり始めていく物語です。
復讐が復讐を呼ぶ悪循環のストーリーに加え、半グレ集団の非道な行為は見るにたえません。その最たるものが、リカに起こる悲劇です。本人には何の罪もないのに、複数の男たちによって消えない傷を負わされました。
作画の良さが悲壮感を倍増させており、かわいらしい表紙も相まって、内容を知らずに読んでしまった人も多かったようです。
(ハララ書房)