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毒蝮三太夫さんのイメージ? 『ウルトラマン』アラシ隊員への勘違い

『ウルトラマン』のアラシ隊員の性格は、「お調子者」のギャグ担当と思われている方はいないでしょうか。しかし、改めて観てみると……それは「真逆」かもしれません。

アラシ隊員ってお調子者だっけ? 毒蝮さんのキャラと混在

毒蝮三太夫さんプロフィール写真
毒蝮三太夫さんプロフィール写真

 俳優、タレントの毒蝮三太夫さんといえば、『毒蝮三太夫のミュージックプレゼント』(TBSラジオ)などで見られる毒舌が人気です。とりわけご年配の方々へ「うるせえババア(ジジイ)」と歯切れよく罵る芸風は、令和を生きる若者世代にも広く認知されています。

 そんな毒蝮さんがかつて演じたのが、『ウルトラマン』(1966年)に登場する「アラシ隊員」です。当時は石井伊吉という名義で活動していました。

 さて、このアラシ隊員に関して、どことなく「お調子者」「ムードメーカー」「口が達者」というような、イメージが付随してこないでしょうか。いわば「コメディ担当」のような、陽気で明るいキャラクターです。実際、筆者や子供の頃に『ウルトラマン』を観た周囲の人間も、そのように記憶していた人が少なくありませんでした。

 しかし、このイメージは明らかに、のちの「毒蝮三太夫」としての活躍によって、後から塗り替えられた勘違いの可能性が高いのです。実際、アラシ隊員は劇中で、どのようなキャラクターだったのでしょうか。

 高い狙撃能力によって、最終回の「ゼットン」ほか多くの怪獣を撃退してきたことは、ファンに知られておりますが、この記事においてはアラシ隊員の、性格に注目することにします。

 第2話「侵略者を撃て」では、アラシ隊員は物語早々から大きないびきでグーグー眠っていました。これだけ見ると呑気な雰囲気ですが、サイレンが鳴れば一瞬で飛び起きて、出動します。その際、(自身のいびきの被害者でもある)「イデ隊員」を叩き起こすなど、体育会系の先輩ノリが強いのです。

 また第23話 「故郷は地球」では、怪獣「ジャミラ」がもともと人間だったことが判明します。その際、イデ隊員は良心の呵責から戦うことを躊躇(ちゅうちょ)するのに対し、アラシ隊員はその態度に激昂します。

 そのほか、第30話「まぼろしの雪山」の回では、調査でやってきた雪の降る山岳で、浮かれ気味のイデ隊員の冗談に、笑うことなく正論で返していました。この回では、村人から迫害を受けている少女を守る「ウー」という怪獣が登場します。ここでもイデ隊員は、ウーを退治することをためらいますが、アラシ隊員は「感傷にひたっている場合じゃない」と一蹴するのです。

 アラシ隊員は全くもって「お調子者」ではなく、そのポジションは完全にイデ隊員の担当でした。アラシ隊員はときに驚くほどドライな性格として描かれています。とはいえ、アラシ隊員が命令を絶対視する冷徹な軍人タイプかというと、そんなことはなく、彼は正義の熱血漢です。

 アラシ隊員が主役の第36話「射つな! アラシ」では、上司の命令を無視して怪獣「ザラガス」を狙撃し、結果として謹慎処分が下されます。もちろんアラシ隊員は軽率に命令を無視したわけでなく、子供らを守るために、やむをえず射撃したのです。彼にとって「目の前の人命」は、あれほど遵守していた命令よりも重いものでした。

 アラシ隊員もまた「葛藤」のなかで戦う、まぎれもないヒーローです。間違っても「うるせえババア!」とは、言いません。

(片野)

【画像】え…っ? 「こんなシンプルで小っちゃかったっけ」 こちらがアラシ隊員が最強怪獣「ゼットン」をあっさり倒した時の武器です

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