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「作品名=主役」と思ったら大間違い! サブキャラがタイトルだった名作

「これ絶対主人公でしょ!」と思うようなタイトルがついているのに、まったく違って驚かされる作品は少なくありません。いったいどんな作品があるでしょうか?

監督が「主人公をタイトルにしよう」と言ったのに却下された作品とは

「もののけ姫」と呼ばれるサンは主人公ではなかった。画像は『もののけ姫』静止画より (C)1997 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli, ND
「もののけ姫」と呼ばれるサンは主人公ではなかった。画像は『もののけ姫』静止画より (C)1997 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli, ND

『鉄腕アトム』や『サザエさん』など、マンガやアニメのタイトルになっているキャラクターは主人公であることがほとんどです。ところが、タイトルになっているから主人公だと思っていたのに、実際に作品に触れてみたら違っていて驚いた経験がある人も少なくないでしょう。

 その代表例が、大友克洋先生の『AKIRA』です。実際の主人公は暴走族のリーダー「金田」であり、「AKIRA(アキラ)」は物語の核心である超能力を持つ少年を指します。赤いジャケットを着た金田に「AKIRA」とタイトルが大きくデザインされたビジュアルが鮮烈だったため、勘違いした人も多そうです。

 手塚治虫先生の『どろろ』は、身体の48か所が欠損している主人公が妖怪を倒して自分の身体を取り戻す物語ですが、この主人公の名前は「百鬼丸」です。「どろろ」は百鬼丸が一緒に旅をする子供の名前でした。なお、1969年にアニメ化された際は、当初『どろろ』だったタイトルが途中から『どろろと百鬼丸』に改題されています。

 あだち充先生の『みゆき』は、主人公の「若松真人」とヒロインの「鹿島みゆき」、「若松みゆき」との三角関係を描いた物語です。ふたりの「みゆき」がいなければ物語は始まりませんが、心の動きなどが細かく描かれ、読者が感情移入する対象となる主人公は真人でした。

 ヒロインの名前がタイトルになっているものの、ヒロインに恋をしたり、サポートしたりする存在の男性が主人公である作品は多く、『涼宮ハルヒの憂鬱』、『織田信奈の野望』、『からかい上手の高木さん』などがそれにあたります。

『ドラえもん』や『となりのトトロ』などは、感情移入できる人間のキャラクターを主人公とするか、インパクトのある非日常的な存在を主人公とするかで議論が分かれそうです。

 また、バカボンからバカボンのパパ中心になった『天才バカボン』、6つ子からイヤミやチビ太中心になった『おそ松くん』、トイレット博士が登場しなくなった『トイレット博士』のように、連載が進むにつれて主人公が変化していく作品もあります。どのあたりを読んだかによって印象が大きく変わるでしょう。

 人の名前そのものではなく愛称がタイトルになっている作品でも、タイトルが指し示しているのが主人公ではない例があります。

 鳥山明先生の『Dr.スランプ』は、もともと「Dr.スランプ」こと「則巻千兵衛」が主人公として構想されていましたが、実際の主人公はアンドロイドの「則巻アラレ」です。アニメ化の際は、視聴者の子供を意識して『Dr.スランプ アラレちゃん』に改題されました。ちなみに『アラレちゃん』というタイトル案もあったそうです。

 宮崎駿監督の『もののけ姫』も、主人公は「アシタカ」であって「もののけ姫」と呼ばれる「サン」ではありません。宮崎監督も気になっていたようで、制作途中に「主人公はアシタカであり、サンではない。『アシタカせっ記』にしたい」と申し出たそうですが、鈴木敏夫プロデューサーに「『もののけ姫』の方がインパクトがある」と却下されました。確かに鈴木プロデューサーの言う通りです。

 同じくスタジオジブリの『ゲド戦記』の主人公は「アレン」であり、タイトルになっている「ゲド(ハイタカ)」はアレンの師にあたります。これは長大な小説の一部を映画化したことによって起こりました。

 作品のタイトルと主人公の関係や主人公の定義はさまざまに変化します。同じような例を挙げていくことで、「作品にとって主人公とは何か」を考えるきっかけになるかもしれません。

(大山くまお)

【画像】え、怖っ! こちらは刺殺されかけた『もののけ姫』主人公です(3枚)

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