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実写『ネムルバカ』絶賛続出!「ぶっ刺さって抜けない」「曲最高過ぎ」 ただ「ある改変」だけは残念?

青春マンガの傑作『ネムルバカ』の実写化映画が、早くも絶賛を集めています。メガホンを取った阪元裕吾監督は、代表作の『ベイビーわるきゅーれ』でも顕著だった若者の空気感なども見事に描きました。

マンガ的表現は抑えめ?

映画『ネムルバカ』ティザービジュアル。左から入巣柚実役の久保史緒里と鯨井ルカ役の平祐奈 (C)石黒正数・徳間書店/映画『ネムルバカ』製作委員会
映画『ネムルバカ』ティザービジュアル。左から入巣柚実役の久保史緒里と鯨井ルカ役の平祐奈 (C)石黒正数・徳間書店/映画『ネムルバカ』製作委員会

「月刊COMICリュウ」(徳間書店)で2006年から2008年まで連載され、青春マンガの傑作として読み継がれてきた石黒正数さんの『ネムルバカ』の実写版映画が、2025年3月20日から公開中です。

 監督は『ベイビーわるきゅーれ』シリーズや『最強殺し屋伝説国岡』などで知られるまだ20代の阪元裕吾さんで、公開前から監督の作風と原作の雰囲気がマッチしていると、大きな期待を集めていました。そして映画は3月4日の完成披露上映会の時点から絶賛を集め、上映開始後も観客の熱いレビューが相次いでいます。

※この記事では映画『ネムルバカ』のストーリーについて一部ネタバレしています。

『ネムルバカ』は大学の女子寮で同じ部屋に住む後輩「入巣柚実(演:久保史緒里)」と、先輩「鯨井ルカ(演:平祐奈)」の日常とその変化を描いた物語です。

 入巣はこれといって打ち込むものがなく、何となく古本とレンタルDVDを扱う店でバイトしている一方、ルカはインディーズバンド「ピートモス」のギター&ヴォーカルとして、自らの夢を追いかけていました。ふたりは緩くも心地よい日々を過ごしていたものの、あるときルカが大手音楽レコード会社から連絡を受け、大きな変化が訪れます。

 阪元監督はいままで主に「殺し屋」が題材のアクションが多い作品を撮ってきましたが、オフビートな会話劇や若者の緩い空気感を描くのも得意で、特に殺し屋の女子ふたり組のほんわかとした日常と激しい戦闘を描いた『ベイビーわるきゅーれ』は、多くのファンを獲得しました。

『ネムルバカ』プロデューサーの寺田悠輔さんはもともと原作のファンで、映像化は考えていなかったものの『ベイビーわるきゅーれ』をきっかけにいくつか作品を観て監督にオファーを出したことをパンフレットで語っています。特に阪元作品の「別れ」の描き方に、『ネムルバカ』との相性を感じたそうです。

 また、原作者の石黒先生も実写化決定時に「(原作は)学生時代から悶々と心に渦巻いていた事を『こういう邦画が観たい』という思いで形にしたものです」「『べイビーわるきゅーれ』を観た時『そうそう、こういうの! 僕はネムルバカをこういう風にしたかったんだよ』と思ったものです。なんの運命の巡り合わせか、その阪元裕吾監督に『ネムルバカ』を撮っていただく事になりまして。これは大変な事ですよ!」と熱いコメントを寄せていました。

 石黒先生が阪元監督に「好きなように撮ってほしい(パンフレットより引用)」とお願いし、完成した映画は基本的に原作に忠実ですが、もちろんいくつかの場面が省かれていたり、出てくる小物や話題が2000年代の設定から現代に合わせて変わっていたり、「壁」や「宇宙人」の比喩表現をそのまま見せるマンガ的演出がなくなっていたりと、改変もあります。

「ルカが入巣に劇中曲『ネムルバカ』の意味を伝えるタイミングが違う」「ピートモスのメンバーそれぞれの出番が増え、掘り下げられている」「入巣のバイト先の先輩『仲崎(演:ロングコートダディ・兎)』が映画解説系YouTuberをしており、とある酷い目に遭う」「有名なルカの造語『駄サイクル』に関して新たなセリフがある」など、いろんな映画ならではの要素があり、なかでもやはりルカ役の平祐奈さんがギターと歌の猛特訓を経て、実際に歌っている楽曲の数々は大きな魅力です。

 石黒先生が原作の歌詞にさらに追加して完成した「ネムルバカ」や、原作では名前しか出てこなかったピートモスの人気曲「脳内ノイズ(こちらも作詞は石黒先生)」も披露されたほか、ルカがアーティストデビューしてから発表する曲も平さんが歌っており、透き通った歌声や曲ごとに変わる雰囲気も見どころでした。

 また、クライマックスのLIVEシーンでの「チューニング」の所作は、石黒先生の案で付け加えたものだそうで、こちらもとてもかっこいい場面です。ピートモスメンバーや、オリジナルキャラのサラリーマン(演:水澤紳吾)の描写もあるこのLIVEシーンは、やはり最大の見せ場と言っていいでしょう。

 新たな魅力も加わった映画版『ネムルバカ』には、「久保ちゃんの死んだ目ややさぐれ感のある演技上手すぎる」「ネムルバカも脳内ノイズもこんな良い曲だったんだ」「ルカ先輩が売れた後の曲の解像度がちゃんと高くてよかった」「笑えるし、乗れるし、感動するし、なんかすごい心地良くて、余韻ひたひた」「将来に対して言いようのない不安がありつつも、明確な夢もなく行動にも移せない凡人大学生の心にはぶっ刺さった」「タイトルが出るタイミングが完璧すぎる」と、さまざまな称賛が相次いでいます。

 絶賛意見を紹介し出すとキリがないくらいですが、一部「残念」と言われている改変ポイントもありました。全体的に原作のマンガならではの演出が抑えられているなかで、「変えられてしまって寂しい」などのコメントもあるのは、序盤で語られる「入巣が寿司を嫌いになった理由」の回想シーンです。

 原作では、入巣が中学時代にとある突拍子もない事件を目撃したせいで寿司が食べられなくなってしまったことが語られるのですが、映画版では幼少期の「普通にありそう」な体験が理由になっています。原作のこの場面は、以前の阪元監督ならノリノリで再現していそうな暴力描写でしたが、残念ながら(?)映画では観ることはできません。気になる方は、3月13日から原作『ネムルバカ』新装版も発売されているので、そちらを確認してください。

 改変もありつつ好評が相次いでいる映画『ネムルバカ』は、3月20日より新宿ピカデリーほかで全国ロードショー中です。

(マグミクス編集部)

【画像】え…っ? 「激熱すぎる」「このバージョンのマンガも読みたい」 コチラが浅野いにお先生が描いた『ネムルバカ』主人公たちです

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