マリオのオーバーオールって「赤・青」どっちが正しい? 人びとの記憶が食い違うワケ
赤色だっけ?青色だっけ? マリオのオーバーオールの色はどっちが正しいのでしょうか。
今は「青いオーバーオール」だけど……いつの間に?

「マリオ」は日本が世界に誇るキャラクターです。その名前を聞けば、誰もがあの特徴的なビジュアルを想像できるはずです。赤い帽子に、たっぷりとした口髭に、オーバーオール姿。いわゆるヒーロー的な格好ではありませんが、それでもゲームキャラクターのアイコン的な存在へと成長しました。
さてそんなマリオのビジュアルですが、あなたが今思い浮かべたマリオのオーバーオールは、「赤」でしょうか?「青」でしょうか?
試しに周囲の人に聞いてみると、意外なほどにその答えは割れるのです。「赤」だという人もいれば「青」だという人もいるでしょう。
いったい、この記憶違いはどこからくるのでしょうか。果たしてどの答えが正しいのでしょうか。
実はどれも正解です。マリオのオーバーオールは、初期はゲームによってさまざまでしたが、「スーパーマリオ」シリーズでは、「赤色」から、ある時点で「青色」に変更されたのです。
「マリオ」が初登場したアーケード版『ドンキーコング』(1981年)のマリオ(厳密に言えばまだマリオという名前はない)のビジュアルを確認してみると、赤い帽子に、青いシャツ、そして赤いオーバーオールという格好です。逆に、ファミコン版『マリオブラザーズ』では赤シャツに青のオーバーオール、『レッキングクルー』におけるオーバーオールは赤色です。
そして、『スーパーマリオブラザーズ』(1985年)、『スーパーマリオブラザーズ2』(1986年)では、「青シャツ」に「赤オーバーオール」という出で立ちが続きます。このゲームに慣れ親しんだ方からすれば、マリオのオーバーオールは「赤」のはずです。
なお、本記事での色の表記はあくまでも「パッケージ」などに使用されているイラストを基準にしています。実際、『スーパーマリオブラザーズ』ゲーム内で、マリオは「カーキ色」に近いシャツを着用していました。ドット数が限られるなか、最小限でアクションを表現するために、腕の色だけを変更する「オーバーオール」という服装が選ばれたのでした。つまり、制作上の要請でマリオの服装、そして職業まで決まっていったのです。
なるほど確かに「赤」は視認性も高く、わずかなドットでキャラクターを表現するにはピッタリの色だったのかもしれません。ではその色は、いつから変わったのでしょうか。
現在、公式サイト「マリオポータル」の「マリオ」紹介ページには「赤い帽子に青のオーバーオール、トレードマークの口ひげ。」という記述と、その通りの姿をしたマリオが描かれています。マリオは「青のオーバーオール」というのが、今の公式設定なのです。
『スーパーマリオブラザーズ2』の時点ではまだ青シャツに赤オーバーオールでしたが、続く『ゴルフJAPANコース』(1987年)では等身が比較的すらりとしたマリオが登場しますが、この時もまだ青シャツ赤オーバーオールです。

では『スーパーマリオブラザーズ3』(1988年)のパッケージを見てみると……反転しました。旧来のものから現在の「赤シャツ」「青オーバーオール」に変わったのです。実際、この『3』からマリオからはデータ容量が一気に拡大。マップ制になり、アクションもギミックも実に多彩になりました。グラフィック面でも色数が増え、描写も細かくなったのです。
同年に海外で発売された『スーパーマリオブラザーズ2』(日本国内では『スーパーマリオUSA』)でも、マリオの服は赤シャツに青オーバーオールでした。
なぜ「反転」させたのか、その理由は明らかにはされていませんが、いわゆる現場作業着としてのオーバーオールは青いデニム生地の方が一般的であること、そしてこれまでのように「赤色」である必要がなくなったことなどが考えられるでしょうか。
『スーパーマリオ3』が発売された1988年は、平成元年の前年にあたります。スーパーマリオのファッションはおおよそ、昭和と平成が境目であると言っても良いでしょう。
(片野)