伝統の思考実験「ホワイトベース VS ヤマト」 いま再考すると「比較にすらならない」格差が?
ネット上の議論で「『機動戦士ガンダム』のホワイトベースと、『宇宙戦艦ヤマト』のヤマトが戦ったらどうなる」という定番ネタがあります。果たしてどうなるのでしょうか。
「ガンダム」放送当時から議論があった?

日本におけるSFアニメの二大巨頭である『宇宙戦艦ヤマト』と『機動戦士ガンダム』は、ともに、現在でも新たなファンを獲得し続けている名作ですが、ふたつの作品が交差する定番ネタと言えるのが、「ホワイトベース 対 宇宙戦艦ヤマト」の思考実験です。現在のSNSなどでも議論が見られますが、古くは『月刊アニメージュ』1979年12月号で「ヤマトとホワイトベースのどちらが強いのですか」という読者からの質問があり、『機動戦士ガンダム』の富野監督が「波動砲さえ回避できれば、ホワイトベースが強いに決まっています」と答えています。
上記の発言はガンダムファンへのサービスといえるでしょうが、実際に両者が戦ったらどうなるのでしょうか。改めて考えてみたいと思います。
まず「速度」で比較、さすがに文明レベルが違いすぎる?

普通に考えると、どう考えても宇宙戦艦ヤマトの勝利でしょう。ヤマトにはワープ機能があり、ワープをしなくても「光速の99%」で航行できます。
光速の99%というのは、『ガンダム』のビームライフルなどに採用されている「メガ粒子砲」の弾速(設定にもよりますが、光速の10%から1/3程度とされています)より速いのですから、まさに「弾よりも速い」わけで、両作品は技術レベルに違いがありすぎます。
もちろん、ヤマトが常に光速の99%で航行しているわけではないでしょう。艦載機であるコスモタイガーなどが、そんな速度で戦えるとも思えません。かなり速度は落としているはずです。
では、どの程度の速度なのでしょうか。宇宙戦艦ヤマト自体には惑星イスカンダルからもたらされた、波動エンジンなどの超先進技術を導入していますが、艦載機には波動エンジンは搭載していないでしょう。どの程度の速度が出せるのかは不明ですが、「単独で地球の大気圏を離脱」できる能力があるとされており、つまり、最低でも第二宇宙速度(時速4万300km/h)を発揮できるわけです。
『機動戦士ガンダム』は、主人公機である「ガンダム」がジャンプ飛行したことで「モビルスーツが飛んだ」と驚かれている世界です。戦闘機であっても、単独での大気圏離脱は不可能でしょう。
「ホワイトベース」以前に、『機動戦士ガンダム』の兵器で、ヤマトにダメージを与えられるかという疑問があります。実際、波動エンジン導入前の地球艦隊の攻撃は、技術レベルの格差でほとんどガミラス艦艇に通用していませんでした。
そしてこの「波動エンジン導入前の地球艦隊」でも、実はとてつもない性能を持ちます。あくまでリメイク版の設定ですが、「ヤマト」に登場する金剛型宇宙戦艦「キリシマ」は、火星から冥王星までを3週間で往復できるようです。旧作でも冥王星周辺で会戦があったことは描かれており、大差ないはずです。
一方「ガンダム」に登場する木星輸送船団のジュピトリスは、地球から木星までを片道2年かけて航行するとされていますので、速度の比較が可能です。
キリシマ:火星~冥王星(93億km程度)を21日(1日4億4285km)
ジュピトリス:地球~木星(8億8600km程度)を730日(1日121万3698km)
つまり、キリシマはジュピトリスの353倍の航行速度を持っていることになります。こうした艦艇に搭載されている艦載機も、同程度の性能差があると見るべきでしょう。
353倍の差とは、徒歩(時速4km)を基準として、時速1412km(マッハ1.15)ということです。つまり、宇宙戦艦ヤマト登場以前の「波動エンジンを持たない地球艦隊」相手でも「弓矢を持った兵士がジェット戦闘機と戦うくらいの文明格差」があることになります。