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え、小泉八雲は「毎晩」飲んでた? 『ばけばけ』トキが分からなかった「ビール」は当時どれくらい高級だったのか 

連続テレビ小説『ばけばけ』では、「ビール」を巡る物語が話題になっています。

薬局でだけ売っていたビール

『連続テレビ小説 ばけばけ Part1 NHKドラマ・ガイド』(NHK出版)
『連続テレビ小説 ばけばけ Part1 NHKドラマ・ガイド』(NHK出版)

 2025年後期のNHK連続テレビ小説『ばけばけ』は『知られぬ日本の面影』『怪談』などの名作文学を残した小泉八雲(パトリック・ラフカディオ・ハーン)さんと、彼を支え、さまざまな怪談を語った妻の小泉セツさんがモデルの物語です。

 第8週36話では 未来の夫「レフカダ・ヘブン(演:トミー・バストウ)」のもとで女中として働く主人公「松野トキ(演:高石あかり)」が、彼から「ビア」を買ってきてほしいと頼まれました。ヘブンはビール(beer)が欲しいのですが、そんなことは分からないトキは、響きの似ている楽器の琵琶や、ひえ、鎌、こま、ごま、親友の「野津サワ(演:円井わん)」まで用意してしまいます。

 そして、明日放送の37話のあらすじを見ると

「ヘブンの女中クビを回避するため奮闘するトキだったが、空回りが続いていた。ヘブンが求める『ビア』を見つけようと、家族にも相談するが的外れな答えばかり。クビだ~と嘆くトキに、『錦織(演:吉沢亮)』は『ビア』は山橋薬舗で購入できると教える。店主の『山橋才路(演:柄本時生)』と出会い、無事に『ビア』を手に入れたトキだったが、まさかの事態がトキとヘブンを襲う」

 と書かれています。第8週の予告映像では、トキが瓶ビールの栓を開けようとして、噴射させてしまう場面が流れていました。

 脚本のふじきみつ彦さんは、36話放送後にX(旧:Twitter)で「松江に取材に行った際に現在も営業されている山口薬局さんでハーンさんがビールを買っていたという逸話を伺い、なんだかんだで本日のそして今週のエピソードを書くに至りました」とポストしました。

 当時、松江でビールを売っている場所は、橘泉堂山口卯兵衛商店(山口薬局)しかなかったそうです。「しまね観光ナビ」の公式HPによると、ハーンさんは毎晩、和菓子をつまみながらビールを飲むのが楽しみだったといいます。英語教師として月給100円を貰っていたハーンさんは、庶民はたまにしか飲めない高級品だったビールを毎日飲んでいました。

 明治時代のビールの値段に関して、キリンホールディングスが運営するキリン歴史ミュージアムのHPを見てみると、

「明治時代初期には、国産びんビール一本が米3~4kgと同じ17~20銭(1878年)と、庶民には手の出ない高級品であったが、やがて一杯5~10銭という価格で樽ビールのコップ売りがされるようになった。消費量は急速に増加し、1883(明治16)年には約3,655石(現在の大びん換算で約104万本)であった国内消費量は、その後4年間で約26,561石(同 約755万本)にまで伸びている。大手ビール会社の設立が相次ぎ、1900(明治33年)までに建てられた国内のビール醸造所は100を超える程であったという」

 と書かれています。

 また、『値段史年表: 明治・大正・昭和』(朝日新聞出版)という書籍を見ると、『ばけばけ』の年代に近い1892年のビールの値段は、大びん1本の小売り標準価格で平均14銭でした(サッポロビールの資料基準)。同年代の蕎麦(もり・かけ)1杯の平均値段は1銭だったため、現代基準でそばの値段を1杯300円とすると、ビール大びん1本は4200円もします。

『ばけばけ』の時代はちょうどビールがどんどん国内に普及していた時期ですが、松江は遅れていたようです。36話で何度もヘブンに怒られていたトキは、貴重なビールを台無しにしてしまうそうですが、また怒りを買ってしまうのでしょうか。

※高石あかりさんの「高」は正式には「はしごだか」

※タイトルを一部修正しました。
(2025.11.18 6:58)

(マグミクス編集部)

【画像】え…っ! 「マジかよ」「合うのかな」 コチラが小泉八雲(ハーン)さんが「ビールのおつまみ」にしていた衝撃の食べ物です

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