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『平家物語』が話題に。源平合戦を扱ったマンガ3選 壮大で切ないドラマが読者を魅了

フジテレビの深夜アニメ枠『+Ultra』で放送中の『平家物語』。琵琶法師たちによって語り継がれてきた古典をもとにした古川日出男訳の「平家物語」をアニメ化しており、話題になっています。今回はそれ以外にも、「源平合戦」およびそれに関連した人物にフォーカスしたマンガを紹介します。

義経が悪人のマンガも

古典文学に斬新な脚色を加えて描くアニメ『平家物語』 (C)「平家物語」製作委員会
古典文学に斬新な脚色を加えて描くアニメ『平家物語』 (C)「平家物語」製作委員会

 12世紀の平安時代末期に栄華を極めた平家の没落と武家勢力の台頭を描き、琵琶法師たちによって語り継がれてきた古典文学の名作のアニメ化『平家物語』が、2022年1月12日(水)よりフジテレビの深夜アニメ枠『+Ultra』で放送中。吉田玲子さん脚本、山田尚子監督による独自視点の入った物語に注目が集まっています。

 巨匠・横山光輝先生によるマンガ『平家物語』も有名ですが、今回はそれ以外にもある、斬新な「源平合戦」について描いたマンガを紹介します。

●『火の鳥 乱世編』

 マンガの神様、手塚治虫先生が源平合戦を描いた『火の鳥 乱世編』は、武蔵坊弁慶にあたる純朴なマタギの男・弁太が主人公の斬新な物語です。

 冒頭で、赤兵衛という猿と白兵衛という犬の物語が描かれます。最初は親友同士だったのに、それぞれの群れを率いるようになって諍(いさか)いが増え、最終的に殺しあうという話を描き、「この世に種族がある限り、権力を争うしかないのか?」というテーマが打ち出されます。そして、そこから40年後の物語として始まる、平氏と源氏の争いに巻き込まれた弁太とその許嫁・おぶうの物語が描かれるのです。

 史実とフィクションを巧みに混ぜており、清盛の乱心や福原への遷都、木曾義仲の京での横暴の原因に永遠の命をもたらす火の鳥の血がからんでいる……というストーリーで、権力と永遠を求める人間の愚かしさを浮き彫りにします。また、弁太が仕える源義経が「目的のためなら手段を選ばず、部下も平気で見捨てる冷酷な男」として描かれているのも特徴で、彼の惨めな最期は義経を扱ったフィクションのなかではかなり異例なのではないでしょうか。

●『リョウ』

 上田倫子先生による少女マンガ『リョウ』は、SF設定と源平合戦をからめた異色の歴史マンガです。現代の普通の女子高生として生きていた遠山りょうが、実はタイムスリップして記憶を失っていた源義経だった(男のふりをした女だった)というストーリーで、そんな彼女を武蔵坊弁慶が迎えに来て平安時代に戻るところから話が始まります。

 同作は武骨な荒くれ坊主として描かれることが多い武蔵坊弁慶を長身長髪の美男子として描いているところが大きな特徴で、りょう=義経とだんだん惹かれあっていくラブストーリーが見どころです。平維盛のりょうへの片想いや、異母妹のりょうに固執していく頼朝の狂気、それ以外にも歴史の大きなうねりに巻き込まれたさまざまな人びとの切ない物語が描かれています。

●『妖怪ハンター』「海竜祭の夜」

 最後に、予想外の形で源平合戦に関連する人物が登場したホラーマンガを紹介します。諸星大二郎先生の人気マンガ『妖怪ハンター』シリーズの一遍「海竜祭の夜」は、主人公の考古学者・稗田礼二郎が平家の落人伝説があるという加美島を訪れた際の出来事を描いていました。

 その島には旧暦の三月二十四日に「海竜祭」と呼ばれる祭りを行う風習があり、ある岬に奇妙な形で鳥居が並べられています。海が大しけでも祭りは当然のように開かれ、稗田が「いったい何のための祭りなのか」といぶかしんでいるなか、島で大きな地震が発生。鳥居が倒れ、島民たちが「海竜様が入ってきてしまう」と大慌てで鳥居を戻そうとするところ、海から奇妙な大波がやってくるのですが……。

 クライマックスに現れる巨大な「海竜様」の恐ろしい姿は、一度見たら忘れられないでしょう。平家の悲劇の物語と人智を超えた怪異を組み合わせた、諸星先生の発想に驚きます。

(マグミクス編集部)

【画像】源平合戦にまつわる物語を斬新に解釈した名作マンガ

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