ドラクエ狩り、抱き合わせ商法…ゲーム史に残る社会現象『ドラクエIII』の熱狂と弊害
ゲームをめぐる犯罪!? 恐怖のドラクエ狩り
発売日の熱狂は大変なもので、大型量販店には深夜から並ぶ人を取材するTVカメラが入っていました。しかしここまでの大騒ぎを想像していない人もたくさんいますから、朝一番で出かけてお店の開店時間に来たと思ったら、とっくにソフトは無くなっていた、というような目に遭う人も多くいました。
そこで事件が起きました。「ドラクエ狩り」です。ゲーム販売店を後にする子供などを狙って、複数で跡をつけ、購入した『ドラゴンクエストIII』を脅し取るのです。発売日のゲーム販売店は大変な人だかりで、次々に購入した袋を持って出てくるお客さんがいるわけで、その中から力の弱そうな子供を狙ってついていくのは、それほど難しくなかったかもしれません。
警察庁の発表によると、発売日だけで9件の「ドラクエ狩り」が確認されていたようです。当時大半の人にとって、TVゲームは子供のおもちゃという認識でしたから、犯罪行為でそれを奪い取るという事件は大きな衝撃を与えました。
●便乗してクソゲーを売りつける!? 抱き合わせ販売
この『ドラゴンクエストIII』争奪戦に便乗して、悪質な売り方をするお店も現れます。『ドラゴンクエストIII』と売れ残りのソフトをセットにして販売する、いわゆる「抱き合わせ販売」です。
抱き合わせというと、基本的には売れ残りですから、多くの場合は遊びたくもないタイトルを買わされます。『いっき』や『バンゲリングベイ』など、独特の操作感で投げ出す人も多いタイトルを無理やり買わされてガッカリ……というような話には枚挙にいとまがありません。しかしそれでも買ったからにはと食らいつくように遊んで『バンゲリングベイ』意外と面白いよ、なんてたくましい子供もいました。
補導にドラクエ狩り、抱き合わせ販売と、多くの事件、問題が起き、社会現象となった『ドラゴンクエストIII』。でもそれはあくまで一部のことであり、また熱狂の裏返しでもありました。肝心のゲームはといえば、社会を揺るがすほどの期待を真っ向から受けてなお、いささかも揺るがない、それどころか期待の上をいくロト三部作堂々の完結編。様々な社会現象、お祭り騒ぎも含め、『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』というタイトルの通り、まさしく伝説のゲームソフトとなりました。
(田下広夢)