『バビル2世』放送から50周年 聞くだけで「物語設定」が分かる、水木一郎氏の主題歌
世代なら誰でも歌える「主題歌」

『バビル2世』と言えば、水木一郎さんによる主題歌が有名です。世代の人なら誰でも歌えるのではないでしょうか? それほどおぼえやすく歌いやすい。そして印象に残る曲でした。この主題歌の優秀なところは、聞くだけで物語の設定が頭に入ってくるところです。
バビル2世の基地である「バビルの塔」が砂漠にあること。そして「3つのしもべ」と呼ばれる空を飛ぶロプロス、海で戦うポセイドン、陸のロデムという仲間がいることが歌詞に織り込まれています。ちなみに筆者はこの歌で「しもべ」という言葉をおぼえました。
この3つのしもべのなかで筆者が印象的だったのが、やはり唯一会話ができるロデムです。普段は黒豹の姿をしているロデムですが、スライム状になれる宇宙生命体で何にでも変身できます。そのため女性の姿になることもありますが、やはり基本の黒豹で野田圭一さんの声でしゃべる姿が最高でした。そう思う人は他にも少なくなく、後年にロデムをオマージュしたキャラが何人かいます。
おぼえたというと、作中でしゃべるコンピュータの声もかん高く印象的でした。この作品でコンピュータはかん高い声でしゃべるものだと思い込んだ人は、けっこういたことでしょう。矢田耕司さんのコンピュータ声が有名ですが、実は他の方が代役を務めたこともあります。
そして声と言えば、作品最大の敵であるヨミの声の大塚周夫さんのド迫力ボイスが忘れられません。実は大塚さんがTVアニメでレギュラーのボス役はこれが初で、それまでの代表作だった『ゲゲゲの鬼太郎』のねずみ男にない威厳ある悪役ボイスは以降の作品に受け継がれていきました。
これらベテラン陣に囲まれて、主人公バビル2世を演じたのが本作初主演となる神谷さんです。神谷さんは本作で叫び声をおぼえたそうで、後に必殺技を叫ぶことに定評があった「雄たけびの神谷」と言われるきっかけの作品になりました。
初と言えば、この後に数々の美麗キャラを描くことになる荒木伸吾さんが、初めてキャラクターデザインを手がけたのが本作になります。荒木さんは本作に愛着があったそうで、後にOVAとして製作された時もキャラクターデザインをふたたび手がけていました。
アニメでは原作マンガと違った展開でストーリーが進んでいます。1話完結という部分もそうですが、原作マンガでは俗世から離れた孤高の戦士というイメージが強いバビル2世に、好意を寄せるヒロインが登場しました。
前半ではともに育った古見由美子。後半では牧場の娘ユキです。当時の女性ファンからは二股疑惑の疑いをかけられ、「東映の男は牧場に行くとダメになる」という名言を生みました。
TVアニメとしては初の超能力バトルを描いた本作は、その後の作品に影響を与えるような超能力描写がたびたびあり、超能力アニメの原典として数々のオマージュをされています。まだ未視聴の若い世代の方は、時代背景を勉強するオリジンとして観ると楽しめるかもしれません。
(加々美利治)