「深い…!」大人も思わずグッとくる、漫画『ドラえもん』傑作エピソード3選
「大きらいだ」25年後ののび太の姿とは

●大人になるということーー『りっぱなパパになるぞ!』(16巻)
のび太は深夜に酔っ払って帰ってきたパパに自分用のテレビを買って欲しいとお願いすると、「子供が何時まで起きているんだ」とはぐらかされて怒られてしまいます。そんなパパの姿に、自分は理解のある優しいパパになるとのび太は決意します。
立派なパパになっているかを確認するためタイムマシンに乗って25年後の世界に行ったのび太は、泥酔した大人の自分と鉢合わせるのでした。
のび太は、大人のび太に向かって直接「よっぱらいは大きらいだ」「子どものぼくは大決心をしたのに おとなのぼくがちっとも守ってない!」と怒る。それに対して大人のび太は「たいした努力もしないである日突然えらい人になれると思う?」と答えるのでした。続けて、それは失敗しては反省しの繰り返しの毎日だと口にします。
一方で大人のび太は、しずかちゃんと息子2人のためだけでも、ぼくは頑張ろうと思えるのだと語り、人生は長いしこれからが勝負だと語り、大人のび太とのび太は「お互いしっかりやろう」と握手をします。
現代に帰ってきたのび太は、毎日は頑張れないから1日置きにでも、やれる範囲で頑張ってみるぞと決心を改めるのでした。
『ドラえもん』はのび太の成長物語です。そんなのび太の成長した姿が登場するこの話は、ある種『ドラえもん』という物語の結末を描いていると言えます。そこに現れるのび太は等身大で飾っておらず、小学生の頃と大きくは変わっていないように見えます。
ついつい未来や自分に対して過度な期待を持ってしまいますが、身近な妻と息子のために頑張ろうと等身大の目標を掲げられるようになったのび太は、平凡でありながら普遍的な「成長」の姿といえるでしょう。大人になるということは、このように一歩進んでは戻っていく足跡の厚みであることを教えてくれます。
『ドラえもん』には大人の寓話のような要素がたくさん詰まっています。1話は3分ほどで読み切れるので、いま一度立ち返って、原作『ドラえもん』を手に取ってみてはいかがでしょうか。
(稲川悟史)