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子供と一緒に見づらい『まんが日本昔ばなし』の悲劇回 「夫婦仲」が悪くて娘が!?

日本各地に伝わるさまざまな物語が登場する『まんが日本昔ばなし』には、勇ましいエピソードやクスッと笑える話が登場します。子供と一緒に楽しめる内容ばかりかと思いきや、なかには悲しすぎる話も放送されていました。切なく悲しい物語を振り返ります。

正しいことをしたのに!少女に起きた悲劇

『幽霊祭』が収録された「まんが日本昔ばなし BOX第11集」(東宝)
『幽霊祭』が収録された「まんが日本昔ばなし BOX第11集」(東宝)

 1975年から94年にかけて放送された『まんが日本昔ばなし』では、たまに「子供の頃に見てトラウマになった」という人が続出する、容赦のない恐怖、悲劇のエピソードもありました。今回は、ネットで「子供には見せられない」という声もある、何の罪もない少女が主人公の悲しすぎる「昔ばなし」を3つご紹介します。

 まずひとつ目は『幽霊祭』というお話で、海産物問屋を営む夫婦と、その娘の「お菊」の物語です。仲が悪い両親の喧嘩を見て心を痛めるお菊は、仲直りをしてほしいと思い、朝の暗いうちからお寺に通って「両親が仲良くなりますように」と願い続けました。

 寺の和尚には「気を長く持つように」と言われ、お菊は毎日のようにお寺へお参りをしたものの夫婦の仲は良くならず、梅雨のある日、お菊は無理がたたって倒れてしまいます。病床で「仲良くしてほしい」と両親に頼むお菊でしたが、彼らはそれでも変わりませんでした。そして、お菊はそのまま病でどんどん弱り、帰らぬ人になってしまうのです。

 亡くなった夜、お菊は幽霊になってお寺に現れると、「両親をよろしくお願いします」と和尚に告げました。それを聞いた和尚は、幽霊のお菊の姿を絵に残します。その後、お菊の両親が、娘の死を伝えにお寺へやってきます。和尚はお菊が幽霊になってお寺に現れたことや彼女の願いを伝え、不仲の両親を戒めました。

 自分たちのせいで娘を死なせたことを悔いた両親は、この出来事をきっかけに仲良く過ごしたそうです。そして、お寺では毎年のご本尊の御開帳と一緒に「お菊の幽霊の絵」を公開し、和尚が「夫婦仲の大切さ」を説くようになり、この行事は「幽霊祭」と呼ばれるようになりました。

『幽霊祭』は両親想いの娘が、悩みを抱えたまま亡くなってしまうという悲しいお話でした。夫婦が亡くなる前に娘の想いに気づき、仲直りをしていれば違う未来があったかもしれません。

 続いて紹介するお話は、『雪むかし』です。むかしむかし、この時代の北国では降り続く雪が「本当の白色」ではなかったそうです。ある時、大きな庄屋に遠い村から小さな娘が奉公に出され、娘はその庄屋の家で一生懸命働いていました。

 ある日、夜の宴会に向けた準備がひと段落して下働きの者たちが昼食を食べていたところ、旅のお坊さんが吹雪のなかで訪ねてきます。お坊さんは何か食べ物を恵んで欲しいと頼みますが、庄屋の女将さんは「すまねえがよそへ行ってくれ」と、戸を閉めてしまったのです。それを見ていた娘はこっそりとお坊さんの後を追いかけ、自分の昼ご飯を握り飯にしてお坊さんに渡します。そのお礼に、お坊さんは紅い布と鈴を娘に渡して去っていきました。

 その夜、宴会が終わって後片付けを押し付けられた娘は、片付け中にお坊さんにもらった紅い布を茶碗の上に落としてしまいます。すると汚れていた茶碗が洗ったかのように綺麗になり、別の皿も拭いてみるとその皿も綺麗になりました。そして、布の力で片付けを終えた娘が、さらにその布を顔に当てると、彼女の顔が美しくなったのです。

 その話を聞きつけた器量自慢の女将さんは布を娘から取り上げますが、鏡を見ながらその布で顔を拭くと女将さんの顔はしわだらけになってしまいます。気がおかしくなった女将さんは、娘を家から追い出してしまいました。

 吹雪のなかを鈴を鳴らしながらさまよっていた娘でしたが、自分の村ははるか遠く、雪に埋もれるように力尽きてしまいます。すると娘が持っていた紅い布から、真っ白な雪が広がっていきました。

 今の雪が真っ白なのは、この『雪むかし』に出てきた紅い布があったからかもしれません。またお皿が綺麗になったのも、顔が綺麗になったのも、娘が雪のように真っ白な心を持っていたからでしょう。悲しいお話ですが、「くすんだ白色」の雪が「純白」に変わっていく美しいアニメーションが、人気のエピソードです。「心の醜さが顔に現れることを教えてくれた作品」と、物語に含まれた教訓も評判ですが、正しいことをした娘が死んでしまうこのお話は、小さい子供にはまだ見せられないかもしれません。

【画像】悲しいお話を手掛けたスタッフは誰?(5枚)

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