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『まんが日本昔ばなし』の「食べ物の大事さ」が分かるモヤモヤ回 「オチがトラウマ」

1975年から1994年にかけて放送された『まんが日本昔ばなし』では、しばしば食べ物をめぐる命懸けの話が放送され、当時の子供たちに食べ物の大切さを教えてくれました。今回は数多くの昔ばなしのなかから、食べ物にまつわる話をふたつ、紹介させていただきます。

いざという時の蓄えも足りず起きた悲劇

「あとかくしの雪」が収録された『まんが日本昔ばなし』DVD第14巻(東宝)
「あとかくしの雪」が収録された『まんが日本昔ばなし』DVD第14巻(東宝)

 1975年から1994年にかけて放送された『まんが日本昔ばなし』では、しばしば食べ物をめぐる悲劇の話が放送され、当時の子供たちに食べ物の大切さを教えてくれました。今回は数多くの昔ばなしのなかから、食べ物にまつわる話をふたつ、紹介させていただきます。

●「五郎びつ」:1980年8月16日放送

 むかしむかし、今で言う栃木県今市(現:日光市)の小百川(こびゃくがわ)沿いにある一本杉という村に、五郎という石屋が住んでいたそうです。五郎はぼんやりした男でしたが働き者で、特に竈(かまど)を作らせたら間違いないと、遠くの村からも注文が入るほどでした。

 自分の作った竈から煙が立ち上るのを見ながら、人の役に立つことを誇らしく思っていた五郎は、もっと役に立とうと大きな石を掘り始めました。竈仕事で銭を稼いだ五郎は、商人から少しずつ米を買い求めてはせっせと石に蓄え始めます。五郎が掘っていたのは、米櫃だったのです。

 それから10年が経ちました。いつもなら豊かな雪解け水が流れてくるはずが、この年はほとんど流れてきません。待てど暮らせど雨も降らず、やがて山々が枯れ始めてしまいました。そして、近隣の村々は、日照りに見舞われてしまったのです。

 畑に撒く水もなくなり、麦も一粒も採れません。山の木も、実をつけてはくれません。食べられそうなものはあっという間に採り尽くされ、その後は飢饉が待ち受けていました。村を治める旦那は蓄えていた食料を村人に分け与えましたが、とても足りるものではありません。他の村々からは飢え死にが出たという噂も出始めたころ、五郎が旦那の家を尋ねてきました。

 五郎に案内され、石櫃の元にやってきた旦那が見たのは、五郎が10年かけてため込んだ米です。大喜びした旦那は村の皆が生き延びられるよう米を配ることにしましたが、そこに予期せぬ出来事が起こりました。

 他の村に嫁いでいた旦那の娘が、飢えたふたりの子供を連れて戻ってきてしまったのです。五郎がため込んだ米は、芋が取れるまで村人たちが生き延びられるギリギリの量でしかありません。3人もの人間に分け与える分は残っていませんでした。

 残された米の量を見て、五郎は「ひとり……多いな」と思案し、ある決断を下します。その日を限りに、五郎の姿を見たものはありませんでした。

 村を救った五郎が残した石櫃は「五郎びつ」と呼ばれ、大切にされたそうな。

『まんが日本昔ばなし』では五郎が姿を消して終わりましたが、元となった昔ばなしでは洞窟の中にこもり、豊作を祈りながら死んでいったとされています。いざという時の蓄えも足りなった時、どうすればいいのか。命を天秤にかけた究極の問いを突き付けられた時、人の本性が現れるのでしょう。

【画像】表紙だけでトラウマ!「飢饉」を扱った作品(6枚)

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