『まんが日本昔ばなし』の「食べ物の大事さ」が分かるモヤモヤ回 「オチがトラウマ」
たかが大根一本のために
●「あとかくしの雪」:1976年9月4日放送

むかしむかしあるところに、貧しい村がありました。近くの村が3年ほど前に噴火して火山灰が降り積もり、ろくな作物が取れなくなっていたのです。
そんなある日、腹を空かせた旅の者が村を訪れました。庄屋に食べ物を分けてくれるよう頼みましたが、きつい口調で断られてしまいます。やがて気を失い、行き倒れた旅人を助けてくれたのは、ひとり暮らしの老婆でした。老婆は旅人にわずかばかりの雑炊を与えましたが、とてもお腹を満たす量ではなかったのです。
老婆の家に、もう食べ物はありません。意を決した老婆は庄屋の畑に向かい、大根を引き抜いてきて、旅人に食べさせてあげました。
翌朝、老婆は大急ぎで旅人を送り出しました。畑の周囲には、火山灰のせいで老婆の足跡がくっきり残っていたのです。早朝の見回りで足跡を見つけた庄屋は、日が昇るのを待って代官所へと向かい、犯人探しをすることにしました。足跡は老婆の家へと続いています。あとを辿れば、老婆が犯人であることはすぐにわかってしまう状況でした。
しかし日が昇り、庄屋が家を出ようとしたときに急に雪が降ってきます。降りしきる雪は瞬く間に足跡を消してしまい、老婆は助かったのです。とはいえ、食べ物がない老婆がその後どうなったのか、知る由はありません。
このお話はさまざまなバリエーションがあり、そのなかでも旅人が実は弘法大師であり、大師が雪を降らせて老婆を救ったという話が有名です。
いずれにせよ、見知らぬ旅人のために危険を犯してわずかな大根を盗んだ老婆の心は、推し量りがたいものがあります。ただひとつ言えるのは、食料とは本来貴重な物であり、歴史上、命がけで手に入れなければならない時代の方がはるかに長かったと言うことです。
『まんが日本昔ばなし』以外にも、1980年代にはACがTVCMで「もったいないお化け」を放送し、食べ物の大切さを訴えていました。思えば、近年飲食チェーン店で騒ぎを起こしている世代は、『まんが日本昔ばなし』も「もったいないお化け」も見ていない世代です。それより上の世代が同じような騒ぎを起こさないのは、もしかしたら、子供の時にアニメで食べ物の大切さを学んだからかもしれません。今こそ再び、アニメの力が必要になっているのではないでしょうか。
(早川清一朗)




