「アニメは必ずもうかる」は幻想? ポニーキャニオンの「アニメ関連損失」が語る現実
フジテレビなどを傘下に持つフジ・メディア・ホールディングスが4月27日に公開した2026年3月期の連結業績予想で、子会社であるポニーキャニオンのアニメ制作費用に関わる評価損を約63億円計上していることが明らかとなりました。何が起こっているのでしょうか?
アニメ制作関連で「評価損」が63億円

近年、勢いがあるアニメ業界ですが、各企業の決算書を見ると、損失を計上している事例がしばしば見られます。『ウマ娘 プリティダービー』シリーズや『勇者刑に処す 懲罰勇者9004隊刑務記録』を手掛けたアニメ制作のスタジオKAIは、25年12月期決算で最終損失5億6500万円を計上するなど、アニメ産業の収益配分を受けられるポジションを確保できるかどうかは死活問題となっています。
このような状況のなか、フジ・メディア・ホールディングスが4月27日に公開した連結業績予想で、ポニーキャニオンがアニメ制作費用に関わる評価損を約63億円を計上したと報じられ、SNSを震撼させました。
おそらくアニメに関わる仕事をしている人間であれば、額の大きさに驚いたはずです。
TVアニメの制作費は安くても1話あたり2000万円近くかかり、確実なヒットが見込める作品となれば1話3億円がつぎ込まれる事例もあります。
ポニーキャニオンが1話の予算をどの程度に設定しているか、外部からは判断できませんが、仮に1話3000万円だった場合、1クール12話作品が17本から18本分、消滅した計算になります。これだけ多くの企画をまとめて潰すとなると、関連する企業との関係悪化が懸念されるため、おそらくは大型の企画が進行不可能になった可能性が高いと考えられます。当然ではありますが、その作品の名前が明かされることはないでしょう。
アニメ「打ち出の小づち」ではない?

現状、アニメは「確実に利益が出る商売」と呼ばれています。その理由は、海外からの配信料が入るためです。作れば作るほど儲かるはず。ではなぜ今回63億円の評価損が出たのでしょうか。
考えられるのは、長年続いていたポニーキャニオン内部での問題を処理した可能性です。ポニーキャニオンはかつて京都アニメーションとTVアニメ『けいおん!』のアプリ化を企画していましたが、見切り発車だったために上手く行かず、多くのトラブルを引き起こしていました。ほかにも、アニメ関連で社内外を巻き込む複数の訴訟があるなど混乱が続いていましたが、何らかの形で企画を見直し、社内体制を改めて出直すための処理を実行したのかもしれません。
もうひとつ考えられるのは、単純にクリエイターの確保ができなかった可能性です。現在アニメの企画は膨大な本数が動いており、制作を担うクリエイターの不足は深刻な状況となっています。動かしている企画に対するクリエイター確保の状況をふまえて、制作が不可能と判断された企画を見送ったとも考えられます。
もちろん、他の理由があることも容易に想像できます。ただ、ひとつ書かなければいけないことは、アニメは「確実に儲かる打ち出の小づち」ではないことが明らかになったという点です。膨大な数、あるいは巨大な企画のなかで何かひとつでもバランスが崩れれば、大きな損失を生み出すリスクもあるのがアニメの世界だということです。
(早川清一朗)


