『千と千尋』リンの「胸の大きさ」は何度も修正された? 宮崎駿と作画監督が込めた意図、バトルとは
宮崎駿作品には男まさりなキャラクターがたくさんいます。『千と千尋』の「リン」はその代表例です。さて、彼女のとあるパーツをめぐって、宮崎監督と作画監督が対立しました。
リンの胸を 作画監督「大きくしたい」 宮崎駿「小さくしたい」

映画『千と千尋の神隠し』(原作・脚本・監督: 宮崎駿)は、当然のことながら宮崎駿さんが全てを描いているわけではありません。実に多くのプロフェッショナルによって、あの世界観は構築されたのです。そして制作現場というものは、プロとプロの意見が衝突することもまた日常茶飯事で、キャラクターの描き方ひとつとっても、問題が発生します。
『千と千尋』には、「リン」という女性キャラクターが登場しました。「千尋」の世話役として登場した先輩の湯女で、なんともさっぱりした、宮崎作品にはよく登場する「男勝り」なキャラクターのひとりです。
さて、そんなリンのデザインが、制作段階で何度も修正が入ったことをご存じでしょうか。リンは他の湯女と異なり割とすらりとしており、背丈も高いです。小柄な千尋と比べると、頼りがいのある外見といえます。
このデザインに至るまでの過程を、作画監督を務めた安藤雅司さんが『ジブリの教科書12 千と千尋の神隠し』(文春ジブリ文庫)掲載のインタビューで、次のように語っていました。
「宮崎さんが描くそういうキャラクターっていつも女性なのに男気が強いんですよ。今回はそれが体型にも反映して、胸をなくそうなくそうと修正が入ってた(笑)」
そう、「バストサイズ」に修正が入っていたのでした。宮崎監督はリンに対し、体型と性格を紐づける演出を施していた、ということです。しかし、この「修正」に対し、安藤さんは次のように述べています。
「だから僕はその辺は逆に意識して、なるべく胸をつけるようにしました(笑)女性らしい体型の方が男勝りの性格には面白いんじゃないかと思って。小さいですけどね(笑)」
リンの体型の背景には、プロフェッショナル同士の静かな攻防が発生していました。さて、この意見のぶつかり合いは「全くないわけではないが、小さい」という妥協点で、決着を見ます。
仮に安藤さんの意向が全面的に通っていれば、リンはかなり刺激的な存在になっていたことでしょう。なお、安藤さんはいたずらにバストを大きくしようとしたわけでなく、あくまでも性格との対比という演出意図があったことは、改めて強調しておきたいところです。
いずれにせよ(重要なポジションとはいえ)脇役であるリンの体型ひとつにすら、何度も修正が繰り返されるほど、製作陣がこだわっていたという点は、今後また『千と千尋』を観るに際に別の視点を与えてくれることでしょう。
(片野)
