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幻の初代との再会も 『ウルトラセブン』運命を分けた「二人のアンヌ」の分岐点 「こっちに出てれば」

もともと『ウルトラセブン』のアンヌ隊員はひし美さんではなく、別の女優さんが演じる予定でした。ふたりのアンヌの「その後」を見ていきます。

「アンヌ隊員」はふたりいた? もうひとりはその後……

 隊員服を着用したアンヌ隊員。画像はひし美ゆり子さんの著書『セブンセブンセブン わたしの恋人ウルトラセブン』(小学館)
隊員服を着用したアンヌ隊員。画像はひし美ゆり子さんの著書『セブンセブンセブン わたしの恋人ウルトラセブン』(小学館)

『ウルトラセブン』の「友里アンヌ」隊員は、1967年の放送開始以降、現在まで新たにファンを獲得し続けているウルトラヒロインです。その理由はなんといっても、演じるひし美ゆり子さん(当時は菱見百合子)の美貌でしょう。アンヌの評価は特撮シーンだけでなく、日本のドラマ史においても重要なヒロインとして、語り継がれています。

 そんなアンヌ隊員は、もともとひし美さんではなく、別の女優が担当する予定でした。そう、ひし美さんは代役だったのです。では、その幻のアンヌの女優の名前は豊浦美子さんといい、1966年の映画『青春とはなんだ』でデビューした、将来有望の若手女優でした。

 豊浦さんは人気を買われ、『ウルトラセブン』のアンヌ役に抜擢されます。すでに台本も渡され、撮影もスタートしていました。

 ところが、別の映画『クレージーの怪盗ジバコ』のヒロイン役に指名され、豊浦さんは『ウルトラセブン』を急遽降板します。当時の芸能界は、ドラマより映画の方を優先するという風潮があり、彼女もそれに倣ったわけです。

 そして、アンヌ役に急遽抜擢されたひし美さん、そしてアンヌ役を急遽降板することになった豊浦さんは、ここに明確な分岐点があります。ふたりのアンヌはその後、どのような人生を歩まれたのでしょうか。

 ひし美さんは『ウルトラセブン』の後も、女優業を続けます。また、いまもウルトラ関連のイベントには引っ張りだこです。プライベートでは過去2回の離婚を経験し、2025年5月には『仮面ライダーアマゾン』で主演を務めた元俳優の岡崎徹さんとの結婚を発表し、大きな話題を集めました。

 一方、幻のアンヌこと豊浦さんは、その後、一般人男性と結婚し、1970年には芸能界から引退しています。現在は兵庫県の西宮市で暮らしているとのことです。

 また、アンヌ役で人気に火がついたひし美さんですが、それでも同じく1970年頃に、引退を考え始めます。ところが、「週刊プレイボーイ」で、彼女のヌード写真が、無断で掲載されるという事件が発生しました。

 この流出騒動を機に、ひし美さんは逆に引退を撤回します。セクシーな路線で女優業を続けることを決心し、多くのドラマ、映画に出演し続けました。アンヌで人気女優となったひし美さんでしたが、待ち受けていたのは、波乱に満ちた芸能生活でもあったのです。

 このように、ふたりのアンヌは『ウルトラセブン』を分岐点に、全く別の人生を歩みました。

 そんな「アンヌ同士」が、同じ舞台に立ったことがあります。2015年4月11日、ひし美さんの熱烈なオファーを受け、とっくに一般人となっていた豊浦さんが神戸で行われたトークイベントに登壇したのです。

 まさに、ふたりのアンヌが夢の共演を果たした瞬間でした。ひし美さんは「豊浦さんがいなければ今のわたしはいません」と熱烈な感謝を送る一方で、豊浦さんは当時を振り返り「こっちに出てれば、って思うことはありますね」と笑いながら語っています。

『ウルトラセブン』を機に、分岐したリアルな人生が浮かび上がった瞬間でもありました。いずれにせよ、アンヌは、アンヌです。

(片野)

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片野

構成作家。1960年代カルチャーを好む。これまでに「ウルトラ」シリーズをはじめとする特撮番組、「ドラゴンクエスト」「ポケットモンスター」など国民的RPGシリーズ、ギャグマンガのジャンルで記事を多数執筆。

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