ウルトラセブンの「代表的な技」はスタッフのミスで生まれた? 何があったのか
アイスラッガーは、特撮ヒーローの武器としては渋すぎる「鋭利な刃」です。この誕生が全くの「偶然」だったという話をご存じでしょうか?
頭から外れたのを「必殺技」に?

『ウルトラセブン』に登場する、必殺武器「アイスラッガー」は非常に魅力的です。普段は「ウルトラセブン」の頭部に装着された装飾でありながらも、使用した際は、相手を一刀両断する刃物へと変貌をとげます。
前作『ウルトラマン』にも「八つ裂き光輪」という切断技がありましたが、アイスラッガーはあくまでも「物理的な刃物」であり、その点が胸をときめかせるのです。
その使われ方も、戦闘シーンによってさまざまです。第3話「湖のひみつ」では、頭部より放たれたアイスラッガーが、怪獣「エレキング」の首と尻尾を豪快にはねます。また第26話「超兵器R1号」では、セブンが手に持った状態で「ギエロン星獣」の頸動脈を切断しました(非常に辛い場面でもあります)。
本格SFドラマとである『ウルトラセブン』では、リアルな痛みを想像させるアイスラッガーという刃物は、効果的な役割を果たしてくれました。これを考えた円谷プロの製作陣は天才的と言わざるを得ないのですが……この「アイスラッガー」の誕生については、とある興味深い話があります。
というのも、アイスラッガーは制作当初、登場する予定はなかったというのです。いったい、どういうことでしょうか。
ウルトラセブンをデザインした成田亨さんは、なかに入るスーツアクターの体型に合わせ、情報量を上部に集中させました。複数案あるなかで結果として、あの西洋の甲冑のような美しいフォルムが採用されたのです。
そして、「友里アンヌ隊員」を演じていたひし美ゆり子さんの書籍『ひし美ゆり子隊員服を脱いだ私』のなかの「座談会」のコーナーでは、記録(スクリプター)を担当していた関根ヨシ子さんによる興味深い証言がありました。関根さんによると、ウルトラセブンのアイスラッガーは、格闘中にセブンのトサカ部分が壊れて外れたことがきっかけで生まれたといいます。
外れたトサカ部分を持って困っていたスタッフが、別スタッフに投げ渡した際、想像以上にうまく飛んでいき、それを見ていた満田かずほ監督がピンときて、武器にしようと考えて生まれたのが、「アイスラッガー」だったそうです。これが事実ならば、ウルトラセブンの頭部が、アイスラッガー発射後にやや寂しい感じになることにも、納得がいきます。
とはいえ、この逸話に関しては、制作順では第1話に該当する「湖のひみつ」の段階で、すでにアイスラッガーが使用されていることや、座談会で関根さんのお話を受けたほかの関係者たちも初耳の様子だったことから、制作時のどの段階での目撃談なのか、少し疑問は残るところです。
いずれにせよアイスラッガーがドラマ、展開、そして後のウルトラシリーズに与えた影響は計り知れません。放送中のシリーズ最新作『ウルトラマンオメガ』でも「オメガスラッガー」として、同様の武器が採用されています。先祖代々の「刃」を継ぐSFドラマ、間違いなく日本の誇りです。
(片野)
