『ウルトラマン』最終回は「ゾフィーがゼットンを倒す」予定だった? シナリオ変更になった理由
『ウルトラマン』は視聴率も絶好調でしたが、制作が追いつかなくなり、第39話で終了を余儀なくされました。クランクアップは最終回放送の10日前だったそうです。最後まで妥協せず、クオリティーにこだわった様子がうかがえます。
大きな変更点

2026年7月には、『ウルトラマン』が放送60周年を迎えます。本作の数ある名作回のなかで傑作として挙げられるのが、最終回にあたる39話「さらば、ウルトラマン」でしょう。この最終回は、当初かなり違う形で終わりを迎える予定だったそうです。
最終回で、「ウルトラマン」は「ゼットン」に敗北します。しかし、ゼットンは科特隊が新兵器を使って倒しました。そこへ「ゾフィー」が参上し、命のひとつをウルトラマンに、もうひとつハヤタ隊員に与え、ウルトラマンはゾフィーと共に光の国へ帰ります。この流れは脚本の「決定稿」に準じたものです。
ところが、「準備稿」の段階では大きく違いました。
脚本家・金城哲夫さんのシナリオをまとめた「ウルトラマンシリーズ金城哲夫シナリオコレクション」を参照した内容を要約すると、
「ウルトラマンがゼットンに倒された後、ゾフィー(ウルトラマンの仲間、と書かれている)が空から降ってきてゼットンを攻撃」
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「ゼットンは光線を浴びて、そのまま火の海に埋没し、断末魔の叫びをあげる」
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「ゾフィーはクルクル回転して第1話に出てきた赤い玉になり、ウルトラマンの姿が、赤い玉の中に消え、上空に舞い上がる」
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「ゾフィーはウルトラマンに光の国に帰ろうと言うも、ウルトラマンはハヤタが死んでしまうので帰れないという」
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「ウルトラマンは『私のいのちをハヤタにあげて地球を去りたい』といい、ハヤタに命をささげて帰っていく」
というような流れでした。ウルトラマンはハヤタの代わりに、死んだことになります。
ここから脚本が、決定稿までに何度変更されたのかは分かりません。「ゾフィー」の名前は、後から付け足されました。変更の大きなポイントは、「ゾフィーが命をふたつ所持し、ウルトラマンもハヤタも死なせなかったこと」と、そして「科特隊がゼットンを倒すこと」です。
金城さんは、最終回でウルトラマンが死ぬ構想であることを新聞のインタビューで答えた際、「ウルトラマンを死なせないで」という子供たちの投書がたくさん届いたことを考慮して、「ウルトラマンは負けるけど死なない構成」に変更したといいます。
また、物語の根底にある「地球は人間自身で守るもの」というメッセージを込めて、科特隊がゼットンを倒す構成に見直したそうです。それは、本編にある「ムラマツ隊長」の、「地球の平和は、われわれ科特隊の手で守り抜いていこう!」という最後のセリフに込められていました。
これは、「自分のことは自分で」と、ウルトラマンが視聴者に残した最後のメッセージだったと思います。
もしも、準備稿がそのまま決定稿になり、ゾフィーがゼットンを倒していたら、ウルトラマンを差し置いてゾフィーが英雄で終わるのではないでしょうか。また、ウルトラマンが死んで終わったなら、その後、ウルトラシリーズと呼ばれる番組は続いていなかったかもしれません。考えれば感慨深くなる、最終回「さらば、ウルトラマン」でした。
※参考資料:「ウルトラマン研究読本」(洋泉社MOOK)、「ウルトラマンシリーズ金城哲夫シナリオコレクション」(朝日ソノラマ社)
(玉城夏)
