「ムラマツ」「ハヤタ」… 『ウルトラマン』の科特隊員がカタカナ表記だったワケ ←TVを見ても分からない?
『ウルトラマン』の科学特捜隊は、もちろん日本の俳優陣が演じていますが、名前はみなカタカナで、(一部例外を除いて)苗字だけという設定でした。第2期ウルトラシリーズではこうした設定はなくなりましたが、なぜカタカナだったのでしょうか? そもそも、映像では「カタカナ」どころか文字で名前が表記されることも、ほぼありませんでした。
ハヤタ? 早田? 下の名前は?

「ムラマツ」、「ハヤタ」、「アラシ」、「イデ」、「フジ・アキコ」……これらは、『ウルトラマン』(1966年)に登場する「科学特捜隊」の隊員名として、ファンならおなじみでしょう。では、これらの名前を、私たちはテレビ放送のなかで「文字」として見ていたでしょうか。実は、作中で隊員名が文字表記される場面は、ほぼ存在しません。
まず、「なぜ、カタカナ表記なの?」と思ったことはないですか。1966年の放映当時は、少年雑誌などで隊員の名前がカタカナ表記で紹介されていました。ただしこれは、あくまで紙媒体だから文字にしただけで、テレビ放送しか見ていない人は、知らなかったかもしれません。
というのも、番組内では、隊員の名前を文字表記していないからです。OPのクレジットにも役名が出ていないので、出演者「黒部進」さんの名前が映っても、「ハヤタ隊員」役かどうか明確ではありません。
また、ドラマのなかで隊員を名前で呼ぶことはあっても、名札などで名前が分かるシーンは見当たりません。文字が映し出されたのは、第36話のサブタイトル「射つな! アラシ」の、アラシ隊員だけかもしれません。つまり、カタカナ表記どころか、どんな漢字を書くか、名字だけでなく名前は何か? と思った人もいたでしょう。
なぜ「名前がカタカナ表記だったのか?」について、公式な説明はありませんが、これにはいくつかの理由があると言われています。
まず、『ウルトラマン』の時代設定は、放映時の1960年代ではなく「近未来」でした。また、物語の舞台は、どう見ても日本なのですが、いうなれば「準・無国籍」でした。そこでカタカナ効果の狙いです。当時、カタカナ表記は「外国風」、「SF」、「組織的」といった印象を与えやすく、近未来を舞台とする作品にとって都合のよい表現でした。

漢字表記にすると、どうしても現実の日本のドラマの印象が強まるため、それを避ける狙いがあったと考えられます(「フジ・アキコ」だけフルネームなのは、女性を分かりやすくするためだと言われています)。
また、「漢字よりも間違いがなく読まれやすい」というメリットがあります。子供が読みやすく、覚えやすいこと。そして、海外展開する際、アルファベット表記も間違われません。
この方針は次作『ウルトラセブン』でも受け継がれたため、「ウルトラ警備隊」隊員の名前もカタカナ表記で統一されました(※「友里(ゆり)アンヌ」だけは例外)。ただ、OPには役名と役者の名前がクレジットされ、わかりやすくなっています。
「近未来の異国・無国籍」などという設定でしたが、それは本編で明言されていません。「岩本博士」は漢字ですし、「大阪」など、日本の地名も随所に飛び出します。逆に、こうしたアバウトな部分から日本っぽさが出て親近感が生まれたかもしれません。
シリーズ第2期『帰ってきたウルトラマン』からは、時代設定が現代ということもあり、主人公「郷秀樹」をはじめ、隊員もみな漢字表記になっています。
科特隊員のカタカナ表記は、単なる表記上の都合ではなく、『ウルトラマン』という作品が持っていた「現実から半歩ずらした世界観」を象徴する演出のひとつだったといえるのではないでしょうか。
余談ですが、1996年に制作された短編映画『蘇れ! ウルトラマン』では、科特隊員の名前が、「村松敏夫、早田進(シン)、嵐大助、井手光弘、富士明子」と、フルネームの漢字表記が追加設定されています。
(玉城夏)

