「エビの味がする」? 昭和ウルトラ怪獣の「トンデモ設定」が次々登場した背景
昭和の「怪獣図鑑」には、今見るととんでもない設定が多く書かれていました。爆笑や困惑を招く記述の数々には、「制作現場の外」で生まれたものも多くありました。
明らかに本編映像と違った「設定」が…?

特撮界に誕生した数多くの怪獣のなかでも、『帰ってきたウルトラマン』に登場した「ツインテール」は、突出して異彩を放っています。生物の基本形である「頭が上、足が下」という常識を完全にひっくり返し、地面側に顔と頭、ムチのような2本の尾が上に伸びるというあべこべの姿をしています。これは衝撃的でした。
古代怪獣ツインテールは、第5話「二大怪獣 東京を襲撃」、第6話「決戦! 怪獣対マット」の前後編に登場します。同じ回には地底怪獣「グドン」も出現しました。そして、この2体に「ツインテールはグドンのエサ」という関係性があるのは、古くからファンのあいだで有名です。
しかし、この設定には少々不可解な点があります。実際に本編映像を見返してみると、グドンがツインテールを明確に「捕食」するシーンは存在しないのです。確かにグドンはツインテールに噛みつき、執拗に襲いかかります。しかし、肉を食いちぎるような直接描写はなく、単純に敵対して戦っているようにも見えます。つまり視聴者に「そういう関係らしい」と感じさせる程度で、本編だけでは「食物連鎖」を断定するほどではありませんでした。
ではなぜ、「ツインテールはグドンのエサ」という設定が常識化したのでしょうか。おそらく大きかったのは、放送後に出版された雑誌記事や怪獣図鑑の影響です。
子供たちのバイブル「怪獣図鑑」の影響が?
1970年代は、まさに怪獣ブームの時代でした。子供たちはテレビを見て終わりではなく、学年誌や怪獣図鑑を読んで怪獣の情報を楽しんでいたのです。そこには、身長や体重だけでなく、「どんな習性を持つのか」「何を食べるのか」といった、生態学的な解説まで書かれていました。本編を見るだけでは分からない、怪獣の裏設定を大量に知ることができたのです。
例えばバルタン星人は、「1万メートル先の米粒が見える」と説明されていましたし、『ウルトラセブン』のイカルス星人は、「大きな耳でアリの足音まで聞こえる」と紹介されていました。さらに『ウルトラQ』のゴルゴスは、「ぶちかましは横綱・大鵬の1万倍」という、子供心を刺激する説明まで付けられていました。
もちろん、それらの情報すべてが円谷プロの厳密監修だったわけではないでしょう。しかし当時は、雑誌や図鑑もまた怪獣ワールドを構成する重要な一部だったのです。
その流れのなかで、グドンとツインテールの関係も、「怪獣世界の食物連鎖」として強調され、ファンの共通認識として定着していったのでしょう。さらに後年になると、甲殻類を思わせるツインテールのデザインから、「エビの味がする」というユーモラスな設定まで広まりました。今では、こちらのほうが印象に残っている人も多いかもしれません。
現在は、怪獣の設定は公式サイトや映像作品そのもので完結する時代です。しかし昭和特撮では、テレビ本編、雑誌、図鑑、そして子供たちの空想が一体となって、怪獣たちの世界観を育てていました。ツインテールは、その象徴的存在だったのでしょう。
唯一無二のビジュアルに加え、「グドンに食べられる怪獣」「エビ味の怪獣」という後年の設定が積み重なったことで、ツインテールは単なる一怪獣を超えた、どこか親しみやすく、不思議な存在へと進化していったのです。
ちなみに、現在では一般的になった女子の髪型「ツインテール」という呼び名も、この怪獣の2本の尾が由来だという説があります。昭和怪獣が現代の言葉にまで影響を与えていたなら、まさにツインテールは、見た目だけでなく存在そのものが唯一無二の怪獣です。
(玉城夏)


