マグミクス | manga * anime * game

「え、ヒーローに見えない」マンガ版『仮面ライダーBLACK』の衝撃デザインのワケ

1987年に全51話の特撮シリーズとして放送された『仮面ライダーBLACK』は、翌年に『仮面ライダーBLACK RX』も放送し、約2年もの長期シリーズとして人気を獲得しました。そんな本作に、当時「もうひとつの仮面ライダーBlack」があったことをご存知でしょうか?

特撮版とコミック版はもはや別モノ?

『仮面ライダーBLACK』Blu-ray BOX 1(東映ビデオ)
『仮面ライダーBLACK』Blu-ray BOX 1(東映ビデオ)

 2022年にPrime Video用オリジナル作品としてリブート版『仮面ライダーBLACK SUN』が制作されるなど、いまなお人気の『仮面ライダーBLACK』。漆黒のボディと全身スーツ姿による生物的なデザインは、それまでの歴代ライダーにはなかったリアルさで多くのファンを魅了しました。そんな同作には、特撮版とは似て非なる「もうひとつのBLACK」が存在します。

 それは原作者・石ノ森章太郎氏が「週刊少年サンデー」で連載したコミック版『仮面ライダーBlack』です。

 悪の秘密結社「ゴルゴム」に連れ去られて改造手術を受けた南光太郎が、ゴルゴム打倒に立ち上がるというアウトラインはそのままだったものの、コミック版はニューヨークから物語がスタート。失われた記憶を取り戻すため、ニューヨークで出会った取材クルーの一員となり、世界各地を転々としながら怪人絡みの事件に立ち向かうというワールドワイドな設定になっていました。

 しかも仮面ライダーのデザインが「キモかっこいい」のも大きな特徴です。

 頭部はバッタを思わせる形状で、口の部分がグワッと開く『仮面ライダーアマゾン』スタイル。脇には虫の足を思わせるパーツが配置され、爪が野獣のように尖っています。まさに「怪人としての仮面ライダーが存在するならこんな感じ」を具現化したようなスタイルでした。

 それでは、なぜそのようなデザインになったのか?

 実は本作は原点回帰をテーマにしており、80年代当時におけるベーシックな仮面ライダーをリ・イメージした結果、怪物じみたデザインが考案されました。それを特撮ヒーロー的な見た目にしたのが特撮版のBLACKであり、生物的な見た目をそのまま出力したのがコミック版のBlackだったわけです。

 さらに面白いのは、コミックの世界では初代『仮面ライダー』がTV放送されていたことでした。作中にはその番組を視聴していたという光太郎の学生時代の先輩が登場するのですが、その先輩がなんとコンピュータ内蔵のバイクを自作するという場面も。

 コミック版のBlackはバイクに乗らず、ライダースーツも着用せず、ひたすら格闘アクションを展開していましたが、このエピソードでようやくバイクとライダースーツを与えられ、光太郎は「仮面ライダーBLACK」として生きていくことを宣言します。

 このあたりの設定が石ノ森先生にとってどれだけ重要だったのかは、1992年リリースされたビデオ作品『真・仮面ライダー 序章』でも感じられました。

『真・仮面ライダー 序章』に登場する仮面ライダーも作中は「仮面ライダー」を名乗らず、生物的なデザインのままエピソードを終えます。そして続編でバイクとライダースーツを手に入れ、そこでようやく「仮面ライダー」になるという展開が考えられていました。

 なお『仮面ライダーBLACK』の初期コンセプトには「バッタ怪人がスーツを着用してヒーローになる」というものも含まれており、それが『真・仮面ライダー 序章』の続編でようやく陽の目を見る予定だったという事情があります。しかし残念ながらその続編は叶うことがありませんでした。この点からも、石ノ森先生がどれだけコミック版『仮面ライダーBlack』に強いこだわりを持っていたかがうかがえるでしょう。

 今なら電子書籍で手軽に読めるコミック版の『仮面ライダーBlack』。ぜひその「もうひとつの世界」を覗いてみてはいかがでしょうか。

(気賀沢昌志)

【画像】え…っ!「キモカッコいい?」 こちらがマンガ版『仮面ライダーBlack』の鮮烈ビジュアルです(3枚)

画像ギャラリー

気賀沢昌志

アニメ・ゲーム・映画・VTuberなどエンタメ全般で活動するフリーライター。アニメ制作会社AICを経て編集プロダクションへ、その後フリーランスとなる。現在でも紙媒体を担当し、ラフの作成から執筆までを担当。シナリオ執筆経験もあり、趣味の範囲ではあるものの、アドベンチャーゲーム制作ツールで自作ゲームを制作中。

気賀沢昌志関連記事

もっと見る

編集部おすすめ記事

特撮最新記事

特撮の記事をもっと見る