『ウルトラセブン』で「なかったこと」にされていた重要設定 第1話からボツになった「弱点」の謎
ヒーローに弱点はつきものですが、ウルトラセブンにはそれらしいものがありません。実は、制作段階ではあったのです。
現場が「なかったこと」にしたボツ設定

「ウルトラセブン」は、ヒーローのなかではある意味「異色」です。というのも、ヒーローには珍しく、(少なくとも初期において)弱点らしい弱点がなかったのです。
ヒーローに弱点はつきものです。例えば前作の「ウルトラマン」は、圧倒的な力と多彩な光線技を持っていましたが、地球上ではごくわずかな時間しか戦えないという弱点がありました。
では、「ウルトラセブン」はどうでしょうか。ウルトラマンのように時間制限があるわけではありません。アイスラッガーという物理技、ワイドショットのような光線技など、必殺技も多彩です。くわえて体長は伸縮自在で、フィジカルも強力。あまつさえ、ピンチの時には「カプセル怪獣」を繰り出すことだって可能です。第25話「零下140度の対決」で、「寒さ」という弱点が明かされましたが、それ以前は明確な弱点は描かれていません。
作中で変身アイテム「ウルトラアイ」が盗まれたり、紛失したりといったエピソードが描かれたのは、セブン変身以降の「ピンチ」が描きにくかったからかもしれません。
とはいえ、製作陣は決してウルトラセブンを無敵の戦士にしたかったわけではありません。企画段階からしっかり「弱点」は設定されていたのです。ところが、この弱点という設定はなぜか「なかったこと」にされて、そのまま撮影は進んでしまうのです。
では、その弱点とはいったい何だったのでしょうか。
それは、「左利き」であることでした。
わかります。サウスポーだったとして、それがなんだというのでしょうか。その気持ちは実によくわかります。もう少しだけ詳しく解説させてください。
この弱点は、まだ企画タイトルが『レッドマン』という仮題だった段階にまで遡ります。かなり初期の時点から、考えられていたのです。セブンが地球に飛来する際に、利き腕の右手をケガしたため、不慣れな左手の使用を余儀なくされていた……という背景まで用意されていました。この怪我のため、アイスラッガーが使用できなかったり、光線技がうまく出せなかったりするというドラマ展開が予定されていたのです。
結果として、この弱点は第1話「姿なき挑戦者」の時から、なかったことにされています。第1話の侵略者「クール星人」を、アイスラッガーで思い切り真っ二つにしました。以降も、セブンが右手をいたわるような描写は特に見受けられません。銃だって、右手で持っています。
真実のところはわかりませんが、右手を負傷しているという弱点は、画的にわかりづらいのに対し、特撮演出の上では非常に大きな制限となることを鑑みるに、撮影の現場で不採用になってしまったとしても、それは無理からぬことです。
逆にいえば、初期の『ウルトラセブン』は、特に弱点がない、名実ともに無敵のヒーローが活躍する、珍しい番組だったと言えるでしょう。
※参考書籍『ウルトラセブンの帰還』(白石 雅彦)
(片野)

