ドラクエ“最弱”武器はなぜ高級な「ひのき」だったのか? 堀井雄二「かしのぼうではダメ」表記の問題
「ひのき」は高級木材ですが、『ドラクエ』世界では「最弱」の武器です。さて、どうして「ひのきのぼう」になったのでしょうか。
「かしのぼう」ではダメな理由とは?

国民的RPG「ドラゴンクエスト」シリーズにおける「最弱の武器」といえば、ご存じ「ひのきのぼう」です。初登場は意外にも初代『ドラゴンクエスト』ではなく、『ドラゴンクエストII 悪霊の神々』でした。その時の攻撃力は「プラス2」であり、装備しないよりはマシといったところでしょうか。
「ドラゴンクエスト」シリーズの認知度が高まるにつれ、「ひのきのぼう」は最弱武器のアイコンとして、ファンに広く認知されるようになります。
いまにして思えば、このひのきのぼうはなぜ「ひのき(檜)」だったのでしょうか。正直、檜の棒に「弱い」イメージもありません。調べてみると、そこには生みの親である堀井雄二氏のとある意図があったのです。
大前提として、檜は高級材木です。耐久性に優れ、光沢を放ち、またなんとも高貴な香りがすることから、古くから日本では社寺建築などに用いられてきました。
一方で、「武器」としても多く加工されてきたかといえば、やや違います。たとえば木刀ならば、材料としては主に「白樫」か「赤樫」、つまりは「樫(かし)」が用いられてきました。
ならば、どうして「かしのぼう」ではなかったのでしょうか。そこには、開発当時のデータ容量が関係しています。
1986年に発売された『ドラクエII』は、前作より容量が増えたとはいえ、使用可能な文字には限りがあり、まだ漢字も使えない状況でした。そうなってくると、魔物や武器、道具の名称で重要となってくるのが、「ひらがな」で伝わるかどうかです。
堀井氏は、朝日新聞の「withnews(ウィズニュース)」掲載のインタビューで、以下のようにコメントしています。
「ただの棒じゃだめ。でも『かしのぼう』だと、お菓子みたい。それに『かし』って言われても平仮名だと何だかわかんない」
同音異義語の混乱を避けた上で、ひらがなでも伝わる材質、そこで白羽の矢が立ったのが「ひのき」だったというわけです。林業大国の日本だからこそ、樹木の種類名で工夫ができました。
さて、『ドラクエ』があまりにも売れたことで、下手すれば「ひのき=弱い」というイメージが伝わってしまったかもしれません。それゆえに、本当の檜に触れた時の感動もまた増します。
現実でもホームセンターなどで、「ひのきのぼう」は買えます。もちろんDIY用で、間違っても武器用ではありません。
(片野)