東宝の「看板怪獣」はゴジラ、大映はガメラ、では松竹は? 1作で終わった『ギララ』の衝撃
「ゴジラ」以降の怪獣ブームのなか、映画会社はこぞって新規怪獣映画を制作しました。「ガメラ」は人気でしたが、ほかにもいたのでしょうか?
松竹が制作した唯一の怪獣映画とは?

「ゴジラ」「ガメラ」は、日本が誇る特撮怪獣の二大巨頭です。東宝と大映の大スターとして知られていますが、他に「松竹」の怪獣もいました。
1954年に東宝が公開した『ゴジラ』およびその続編シリーズが空前のヒットを記録し、日本は高度経済成長の過程で、怪獣ブームを迎えます。そうしたなか、1965年に大映(現KADOKAWA)が『大怪獣ガメラ』を公開しました。
そして『ガメラ』も大ヒットを記録し、シリーズ化します。以降ゴジラとガメラは高度経済成長期における、子供たちの大スターとしての地位を確立したのでした。
その後の両者が歩んだ紆余曲折はさて置くとして、素朴な疑問が浮かびます。怪獣ブームだったならば、他の映画会社も怪獣特撮に参戦しなかったのでしょうか。
もちろん参戦していました。しかし、シリーズ化されなければ、たとえ巨大な怪獣であろうと、歴史に埋もれてしまう運命にあったのです。
前述のとおり、日本を代表する映画会社の松竹も、怪獣映画を制作したことがあります。1967年、テレビ特撮でいえば『ウルトラセブン』の放送年に当たるこの年、松竹は肝いりの怪獣映画『宇宙大怪獣ギララ』(監督:二本松嘉瑞)を公開したのです。
リアルタイム世代、あるいは特撮ファンならいざ知らず、今は顧みられることも少ない怪獣映画といえます。
そのビジュアルは強烈でした。ゴジラやガメラは地球由来の生物であることが外見からも分かるのですが、「ギララ」は真逆です。突き出た触覚、赤い目玉、菱の実のような形の顔、そしてイボイボの身体と、一目で「宇宙怪獣」と分かる異様な出立ちでした。
本作は宇宙空間で宇宙船に付着したギララの細胞が、地球上の電子エネルギーを吸収して怪獣化し、日本を襲うという内容です。作品のクオリティは決して低くありません。脚本のセリフ回しはテンポよく、こと序盤は宇宙生活を基盤にしたラブコメのようでもあります。この辺りは松竹のお家芸といったところでしょうか。
特撮シーンもみごとでした。『ウルトラQ』の特撮も担当した川上景司さん、『ゴジラ』の特殊美術監督を務めた渡辺明さんなど、特撮業界を牽引してきた巨匠が携わっており、街やダムを破壊するシーンは迫力満点です。
加えて、プロモーション企画も相当に気合が入っていました。たとえば「ギララ」という名前は大々的な公募で決定しており、集まった数は実に21万通ということで、いかに注目度が高かったかが分かります。
ただ、残念ながら、興行的には苦戦を強いられました。それは本作がシリーズ化していないことからも分かります。さらにこの『ギララ』以降、松竹は怪獣映画を制作していません。同時期に『大怪獣空中戦 ガメラ対ギャオス』が公開されている点からしても、相当厳しい戦いだったようです(※2008年公開の映画『ギララの逆襲/洞爺湖サミット危機一発』では配給会社は異なりますが、松竹も製作委員会に加わってはいます)。
怪獣大国日本に「ゴジラ」「ガメラ」とは別に、「ギララ」というシリーズもある世界線は、見てみたかった気もします。ちなみに、『ギララ』公開の1967年には、日活も『大巨獣ガッパ』という作品で怪獣特撮に参入しました。こちらも、シリーズ化には至っていません。
(片野)
