愛されないオタクの過激な“推し活”映画? 『ガス人間第1号』のヤバすぎる内容
まもなくNetflixでリブートされる東宝特撮映画『ガス人間第1号』は、実はかなり“ヤバい”内容だとご存じでしたか?
ガス人間の犯行動機は「恋心」じゃなくて「推し活」?

Netflixで2026年7月2日より配信予定の『ガス人間』は、1960年の東宝特撮映画『ガス人間第1号』をリブートした全8話のシリーズです。小栗旬さん、蒼井優さん、広瀬すずさん、林遣都さん、竹野内豊さんらの出演に加え、物語の鍵を握る「ガス人間」を本木雅弘さんの長男でモデルのUTAさんが演じることが発表され、大きな注目を集めています。
『ガス人間』の元である『ガス人間第1号』は、『美女と液体人間』(1958年)、『電送人間』(1960年)に続く「変身人間シリーズ」の第3弾として製作されました。『ゴジラ』(1954年)を手がけた本多猪四郎監督と円谷英二特技監督による、大人の観客を意識した特撮作品です。
『ガス人間』の配信スタートを前に、『ガス人間第1号』もNetflixで配信が始まっています。改めて、どのようなストーリーなのか振り返ってみましょう。
※ストーリー展開にふれる部分があります。
『ガス人間第1号』の主人公は、自らの意志で自由に身体をガス化できる男「水野(演:土屋嘉男)」です。ガス人間になった水野は連続して銀行強盗を行い、行員や警官を殺して大金を強奪します。
水野は没落した日本舞踊の家元「藤千代(演:八千草薫)」に想いを寄せ、彼女に多額の資金を提供していました。藤千代は受け取った金が犯罪によって生み出されたことに気づかず、発表会に向けて芸の稽古に邁進します。
水野の犯行の動機は、非常に身勝手なものです。彼は藤千代の発表会を成功させて再び世間に彼女を評価させたいと考えており、そのために人殺して大金を奪いました。
とはいえ、水野の彼女への執着は、恋心と一言で言い表せないものです。彼は藤千代に見返りも要求していません。水野の行動は、行き過ぎた「推し活」のように見えます。
一方、水野の正体を知った藤千代は拒否感を示しますが、「僕は君の美しい舞台を世間に認めさせてやるんだ!」と水野に強く言われると、拒絶できなくなってしまいます。彼女が水野から得た資金で舞台を完遂しようとするのは、芸術家としてのエゴなのでしょう。ふたりが抱き合うと雷鳴が轟く演出が施されているのは、社会から排斥された彼らが悪魔に魂を売ったことを表しているかのようです。
水野をガス人間にした生物学の権威である「佐野博士(演:村上冬樹)」も、「強靭な宇宙飛行士を生み出したい」という理由で多くの若者を犠牲にしていました。これも学究の徒のエゴと言えると思います。水野、藤千代、佐野という三者の強烈なエゴが、多くの犠牲者を出す悲劇を生み出したのです。
水野はもともと、航空自衛隊のパイロットを志すような真面目な青年でした。しかし、ガス人間になってしまってからは、空気中に漂うガスのように人間としての実在感を得られなくなってしまいます。
だからこそ、他人の人生に自分の人生を預けるような、過激な「推し活」に走ってしまったのではないでしょうか。水野の過剰な藤千代への思い入れが、彼女の芸に対する情念と火花を散らし、取り返しのつかない事態へと進んでいきます。
『ガス人間第1号』の結末は、とても悲劇的であり、同時に驚くほど美しいものです。名状しがたい美しさの八千草薫さんと、幽鬼のような土屋嘉男さんの名演(八千草さんに仕える左卜全さんの存在感も素晴らしい)、ガス人間を見事に表現した円谷特技監督による特撮、本多猪四郎監督の多くを語らないのにスピーディーでドラマチックな演出をぜひ堪能してください。
(大山くまお)
