虫かと思ってた? 成田亨が語った最強ウルトラ怪獣「ゼットン」のモチーフが「甲冑」になった理由
「ゼットン」は何がモチーフかご存じでしょうか? 虫のようにも思えますが、その着想は意外なところからきていたのです。
カミキリムシとばかり思っていたが

『ウルトラマン』に登場する最強の怪獣といえば、「ゼットン」です。初代「ウルトラマン」を打ち負かしたことから、今でも最強怪獣の代名詞として、広くファンの間でも認知されています。そんなゼットンの、「モチーフ」はなにかご存じでしょうか。
まず、ゼットンの別名は「宇宙恐竜」でした。このセンスもまた脱帽ものです。ゼットンの姿、容貌からは一切、恐竜要素を見出せません。その乖離が、計り知れない宇宙のスケールを感じさせてくれました。
そんなゼットンの元ネタは、「虫」のようにも思えます。全体は黒い甲殻に覆われ、四肢は白い蛇腹が剥き出しです。また、胸部には橙色の発光体がふたつあり、背面は甲虫の外骨格を思わせる形状をしています。
極め付けは顔でしょう。触角も、目と思しき突起部分も、中央に配された細長い発光器官も、全てが無機質であり、一目で「話が通じない」相手であることが分かります。全体的なイメージは、やはり虫、それも「ゴマダラカミキリ」あたりに類似が認められるでしょうか。
ところが、資料によるとデザインを担当した芸術家の成田亨さんは、全く違うモチーフからこのゼットンを生み出していました。
成田さんの著書『特撮と怪獣 わが造形美術 増補改訂版』(リットーミュージック)では、成田さんはゼットンの、とりわけ「顔」のモチーフについて、次のように述べています。
「顔は、中世のヨーロッパの侍の鎧のイメージから変形していきました。甲冑を着た騎士のイメージを頭に浮かべながら、それを崩して変形するわけです」
発想の飛躍が異次元すぎます。さらに成田さんは、その顔のデザインの中央に、縦長の発光部を配置しました。そして仕上げに、
「これは悪いやつだから、やっぱり角があったほうがいいだろうと僕は思いました。そういうわけで角をつけました」
とのことです。さらりと述べていますが、あの角も非常に特殊な形状で、本当に天才的な感覚の持ち主であったことが分かります。
確かに成田さんがデザインしたものには、「ウルトラセブン」や「ボーグ星人」など、西洋の甲冑をモチーフにしたものも多いです。しかし、まさかゼットンまで、そうだったとは驚かされます。
天才芸術家・成田亨のデザインの底力は、最強怪獣の設計でもその最強ぶりを見せ付けたのでした。
(片野)
