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ゲーマーが「喜ぶ完全版」と「モヤモヤする完全版」がある? 満足度を左右する「提供の仕方」とは

「追加要素は嬉しいけれど、買い直しはつらい」。完全版に対するユーザーの複雑な感情はどこから生まれるのでしょうか。

販売する時期や形態で生じる「複雑な感情」

「完全版」が登場することで、無印版が「不完全版」のように見えてしまう可能性も…? 写真は納得いかない表情をする男性のイメージ(画像:写真AC)
「完全版」が登場することで、無印版が「不完全版」のように見えてしまう可能性も…? 写真は納得いかない表情をする男性のイメージ(画像:写真AC)

 ゲーム業界に限らず、どの業界でも商品を作り続けるためには利益を生み出さなければなりません。そのため、メーカーはさまざまな販売戦略を取り入れています。ゲーム業界でいえば、「限定版」や「完全版」もそうした工夫のひとつです。

 限定版の場合は、特典内容と価格のバランスが取れていれば、大きな問題になることはさほどありません。通常版も同時に販売されるため、特典に魅力を感じる人は限定版を、そうでない人は通常版を選べます。ユーザー側に選択肢が用意されているため、不満が生じにくい仕組みです。

 しかし、完全版は事情が少し異なります。追加要素によって作品の魅力が増していたとしても、一部で批判が起こるケースがあります。もちろん歓迎される場合も少なくなく、完全版そのものが悪いというわけではありません。ただし、販売方法やタイミングによってはユーザーが困惑し、複雑な感情を抱くこともあるのです。

「物語を人質に取られた」と感じるユーザーも?

 完全版では、新シナリオや追加キャラクター、新たなエンディングなどが盛り込まれることも決して珍しくありません。作品世界がより深く描かれるのは、ファンにとって嬉しい要素といえるでしょう。

 ただし、「物語の全てを知るには、完全版を遊ばなければならない」と感じるユーザーもいます。すでに無印版(完全版のベースとなる最初の製品)を購入したユーザーからすれば、新シナリオを楽しむにはもう一度同じゲームを買わねばならず、あまり愉快な状況とはいえません。

 特に不満が高まりやすいのが、「他機種への移植」にあわせて新シナリオや新キャラクターが追加されるケースです。

 Nintendo Switch/ Switch2やPlayStation 5、Xboxなどの現行ゲーム機をすべて所有しているユーザーは、決して多くありません。自分が持っていないゲーム機に向けて完全版が発売されると、嬉しさよりも「遊べないもどかしさ」が先に立ちます。最初から別ハードに展開するゲームならば諦めもつきますが、「移植で新要素が追加」となると、複雑な気持ちになるのも無理はありません。

発売間隔や販売形態に「ユーザー困惑」のケースも

 完全版の評価を大きく左右する要素として、発売時期やその形態も影響を与えています。例えば、ひと世代前のハードで発売された作品が、現行機向けに追加要素付きで再登場する場合は、比較的受け入れられやすい傾向があります。

 かつて遊んだ思い出の作品が、現行機で快適に遊べるという利点は、やはり大きなものです。そして追加要素も加わるなら、無印版の魅力を損なわない限り、その喜びもいっそう大きなものになるでしょう。

 もちろん、完全版の展開自体に賛否はありますが、世代をまたいだ完全版のリリースは、大きな批判には発展しにくく、全体として見れば歓迎されるケースが多い傾向にあります。

 一方で、同じ世代のゲームハード向けに完全版が発売される場合は、ユーザーの困惑を招きやすくなります。

 すでに購入したゲームと重複する部分が多い内容の作品を、同一ハードで再び買わなければならないとなると、当然、一部に不満の声があがってきます。追加要素の魅力が大きかったとしても、「最初から入れておいてほしかった」「また買い直さなければならないのか」と感じるユーザーがいても、不思議ではありません。

「有償アップグレード」という解決策はあるが…?

 そのような不満を和らげる方法として、近年では「有償アップグレード」が注目を集めています。

 完全版のみを新たに販売するのではなく、既存ユーザー向けの追加要素を有償のアップグレードで提供する方法です。無印版を持っている人は比較的安価なアップグレード料金だけで済み、新規ユーザーは完全版か無印版かを選択できるという形です。

 アップグレード方式であれば、既存ユーザーはゲームソフトを丸ごと買い直す必要がなくなるため、納得感が高まります。興味がある人はアップグレードを購入し、興味がなければ見送るだけです。この関係は、最初に挙げた「通常版と限定版」にも通じるものがあります。

 ユーザーにとっては意見の分かれる話ですが、すべての作品が理想的な形で展開されるわけではありません。

 有償アップグレードへの対応には、追加の開発コストが発生します。メーカー側には相応の体力が求められますし、ソフトの売れ行き状況によって、実施が難しくなるケースもあるでしょう。

 アップグレードに対応したことで、利益が目標値に届かず赤字になれば、メーカーの今後の活動にも影響を与えかねません。完全版のみを販売するケースには、メーカー側の苦渋の判断が含まれている可能性もあります。

 近年では、リマスター版に新要素を加えて既存ファンと新規ユーザーの両方を取り込む手法も増えています。また、Nintendo Switch 2では、Nintendo Switchで発売済のゲームを、描画やロード時間を改善したうえで発売する「Switch 2 Edition」の展開も活発です。

 追加要素によって好きな作品の魅力がさらに広がること自体は、多くのユーザーにとって歓迎したい展開でしょう。

 だからこそ重要なのは、「何を追加するか」だけでなく、「どのような形で提供するか」です。完全版が歓迎されるか、それとも批判されるか。その分かれ道は、追加要素の内容に加え、ユーザーとの向き合い方も重要です。メーカー各社は、今後も試行錯誤を重ねながら、より納得感のある提供方法を模索していくことでしょう。

(臥待)

【画像】「えっ、すご」「完全版すぎる…」 これが『新作ドラクエ』通常版と同時発売の「全部乗せ」バージョンです(6枚)

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臥待

雑食系ゲームライター。ファミコン時代のクラシックゲームから現行機まで幅広くアクセスし、TRPGやゲームブックなどアナログ系にも手を出しながら、様々な「面白さ」の探求を日々続ける雑食系ライター。「「隠れた名作」を隠れさせることなく広く知らしめたい」という密かな野望を持っており、ユニークな依頼を万年受付中。

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