サンリオ、東映…巨大IP企業が「ゲーム」参入 委託ではなく「自ら立ち上げる」メリットは?
サンリオに東映と、強いIPを持つ企業のゲーム参入が相次いでいます。なぜ今、異業種の大手企業がゲーム市場へ乗り出すのか。その背景と勝算を探ります。
「数千万本レベル」の可能性も秘めている?

近年、強力な知的財産(IP)を持つ大企業が、直接ゲーム事業へ乗り出す動きが目立っています。一例を挙げると、「集英社ゲームズ」(2022年設立)や「TBS GAMES」(2023年)など、出版やTV事業で知られる企業の参入が話題となりました。
また直近では、サンリオと東映が、ゲームブランドの立ち上げを発表しています。どちらも2026年4月21日に報じられたものなので、記憶にとどめている人も多いことでしょう。
これらの企業は、誰もが知っているほど有名なものばかり。そうした大企業が、なぜ自社でゲームブランドを立ち上げるのか。その狙いやメリットを考えていきます。
各企業がゲームブランドを立ち上げた目的や切り口は、それぞれ異なるかもしれませんが、「IPの有効活用」を狙っているのはおおむね間違いないでしょう。IPは、活用次第でその効果を何倍にも広げることが可能です。
IPとゲームの組み合わせは、「大企業が動くほど魅力的なのか?」と、疑問に思う人もいるかもしれません。そこで、ゲームブランドの立ち上げからは少し話が離れますが、まずはIPとゲームの組み合わせによる代表的な成功例を紹介します。
小説「ハリー・ポッター」は、改めて説明する必要がないほど、世界的な大ヒットを遂げました。映画をはじめ書籍以外の市場にも進出し、いずれも一定以上の成果を残しています。そうした他市場と比べても遜色のない成功を収めたのが、「ハリー・ポッター」とゲームの組み合わせから生まれた『ホグワーツ・レガシー』です。
『ホグワーツ・レガシー』は、「ハリー・ポッター」の世界をオープンワールドで描いたゲームです。2023年2月に発売された同作は、2025年末時点で累計販売本数を4000万本まで積み上げました。
この本数は、ゲーム史全体で見ても相当の上位に入る数字です。国内外で熱烈な支持を集めた『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』(販売実績3744万本)をも上回っており、どれほどの大ヒットだったかがうかがえます。
小説、映画、テーマパークなど、すでに世界的な人気を築いていた「ハリー・ポッター」というIPが、ゲームと結びつくことで市場を大きく動かしました。大企業であっても、こうしたIPとゲームを組み合わせた成功例に無関心ではいられません。
『ホグワーツ・レガシー』の成功には、「ハリー・ポッター」自体の人気が大きな追い風となりました。新規のゲームタイトルがヒットするには、まず存在を知ってもらわなければ話は始まりません。しかし人気IPを使った作品なら、「知名度による認知」という大きなアドバンテージを得られます。
『ホグワーツ・レガシー』というゲームの中身を知らなくとも、「ハリー・ポッター」のゲームというだけで関心を示す人は少なくありません。特に、「ハリー・ポッター」のファンが興味を寄せるだけで、潜在的な購買層は一気に広がります。
このように、IPを生かしたゲーム展開は、完全新規の作品と比べて注目を集めやすく、新たなビジネスとして成功する可能性が高まります。
『ホグワーツ・レガシー』ほどの大成功は頻繁に出てくるものではありませんが、IPとゲームの組み合わせから生まれる可能性の大きさは侮れません。IP活用に励む企業であれば、新たな市場の開拓を検討するのは、ごく自然な流れでしょう。
「ゲームブランドの設立」は本気度の表れ?

ただし、「人気IPさえ使えば成功する」と言えるほど、IPとゲームの組み合わせは簡単な話ではありません。ファンがついてくることと、ファンを甘く見ることはまったく別の話です。
ファンは無条件に従う存在ではなく、むしろ好きなIPだからこそ厳しい目で判断します。設定の扱い、キャラクター描写、世界観の再現度、そしてゲームとしての面白さ。どれかが欠けてもファンの失望感は大きくなり、ヒットどころかネガティブな反響を生み出しかねません。
『ホグワーツ・レガシー』が成功した理由も、単に有名なIPだったからではなく、ゲームとして一定以上の完成度を持ち、なおかつ原作世界をしっかり体感できる内容だったからこそ、多くの支持を得られたのです。
従来のパブリッシャーとデベロッパーの関係でも、IPを活用したゲーム作りは可能です。しかし、IPの魅力を最も知るのは、そのブランドを長年育ててきた権利元企業にほかなりません。開発会社に丸投げするだけでは、IPを存分に生かすことは困難です。
「IP×ゲーム」という方程式を生かすには、その両方に精通する人物、もしくはチームの存在が求められます。仮にゲーム部分の開発を他社に委ねるとしても、両方を熟知した存在が権利元企業の内部におり、開発プロジェクトを管理・監督できれば、IPの魅力を生かしたゲーム作りの成功率はより高まることでしょう。もちろん、開発を全て内部で行うというのも有効な手です。
そうした存在となり得るのが、各社が設立に乗り出したゲームブランドです。それは、IPの魅力を熟知した権利元企業が、ゲームという分野に本気を出して取り組むと判断した結果ともいえます。
先日、ゲーム業界への参入を明らかにしたサンリオと東映は、いずれも非常に強いIPを持つ企業です。サンリオのIPは、子ども層への強さはもちろん、かつて親しんだ大人たちを再び振り向かせる力もあります。
また、東映が持つIPの厚みも侮れません。さらに、ブランドのロゴ制作を『ゲーム発展国++』を手がけたカイロソフトに依頼するなど、ゲームファンのツボをくすぐる展開も見せました。単なる話題作りにとどまらない、同社の本気ぶりが伝わってきます。
IPの知名度に頼るだけでなく、ゲームとの融合がプラスになるように各ブランドが正しく舵取りを行えば、この流れの先に「新たな『ホグワーツ・レガシー』」が誕生する日がいずれ来るのかもしれません。
(臥待)


