マグミクス | manga * anime * game

なぜ「ゲームの映画化」が増えている? どちらの業界も「苦境」、チャンスに熱視線

世界的な興行が成功し、日本でも大ヒットを飛ばしているのが「ゲーム原作映画」です。『マリオ』『マインクラフト』などが多くの観客を集め、今後も『ストリートファイター』など有名作品の映像化が続きます。数字を見ていくと、盛んな映画化の背景には、ゲーム業界、映画業界それぞれの事情が明らかになってきます。

ゲーム産業の「成長鈍化」が背景に?

2025年春に日本で上映され、2か月で興収30億円以上の打ヒットとなった『マインクラフト/ザ・ムービー』DVD(ハピネット)
2025年春に日本で上映され、2か月で興収30億円以上の打ヒットとなった『マインクラフト/ザ・ムービー』DVD(ハピネット)

 2025年の映画産業は、ゲーム原作作品を抜きには語れません。インディーゲーム『8番出口』の爆発的ヒットや、ハリウッド映画『マインクラフト/ザ・ムービー』の世界的な成功が大きな話題となりました。続く2026年も、待望の続編『ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー』や『ストリートファイター』の公開が控えています。

さらに、人気作『ゴースト・オブ・ツシマ』の実写映画化および日本でのアニメ化が進行しているほか、小島秀夫氏の『デス・ストランディング』も、日米両国で映像化企画が進んでいます。

 配信ドラマでは『フォールアウト』や『THE LAST OF US』が世界を席巻。日本のアニメシーンでも『グノーシア』や『Summer Pockets』、『ツイステッドワンダーランド』といった話題作の映像化が相次いでいます。

 近年、盛り上がるゲームの映像化は、日米ともにひとつのトレンドとなっています。この流れがどうして起きたのか、数字を見ながら解説したいと思います。

 まず、ゲーム産業の現状を整理します。世界のゲーム市場は、2010年代後半からコロナ禍にかけて、年平均成長率(CAGR)は13%という急成長を果たしました。しかし、その成長は次第に鈍化し、2021年から2023年の成長率はわずか1%にまで減少しています。

 今後はもう少し持ち直すと予測されていますが、ふた桁の成長率が見込めそうにないという状況です(Leveling Up for the New Reality – The Gaming Report/ボストン コンサルティング グループ)。

 ゲーム開発の足元では、製作費の高騰もあり、利益が出しにくくなっているのもあって、ゲーム産業のユーザー獲得競争は熾烈(しれつ)を極めている状況です。

「映像化」で跳ね上がるゲームユーザー数

 こうした状況のなか、認知拡大とロイヤリティ向上を同時に実現する「映像化」が、極めて有効な戦略として再認識されるようになりました。

 イギリスの調査会社Ampere Analysisの調査によると、2024年にAmazon Prime Videoで配信されたドラマ『フォールアウト』は、同ゲームの月間アクティブユーザー(MAU)を約490%増加させたとのこと。HBO製作の『THE LAST OF US』も新規ユーザーを約400万人獲得したと、同調査は伝えています。

ゲームの映像化はプレイヤーを大規模に獲得できると、数字の上でも実証されています。この流れは実写の映画やドラマだけでなく、アニメにも起こっています。

 Ampere Analysisの別の調査では、2024年、ゲーム原作のアニメーションが前年比で137%増加。原作のリソースとして3番目につける規模になっているといいます。

『デス・ストランディング』や『ゴースト・オブ・ツシマ』のように、実写とアニメの両輪で企画が進むケースが増えているのも特徴です。複数の媒体で展開することで、より幅広い層にアプローチする狙いがうかがえます。

1 2 3

マグミクス編集部関連記事

もっと見る

編集部おすすめ記事

最新記事

ゲームの記事をもっと見る