マンガ史に残る伝説に!? 人気が出すぎて「現実社会」を動かした名作3選
マンガの世界は、ときに現実社会を大きく動かしてきました。キャラクターの死に本物さながらの葬儀が行われ、ひとつの作品が国のスポーツ文化を変えてしまうこともあります。そんな伝説級の影響力を残した作品たちを振り返ります。
ときに社会を動かす「マンガ」の力

マンガの人気は、ときに社会を大きく動かすことがあります。編集部や制作側、さらには現実世界までも巻き込み、前例のない対応が取られることも少なくありません。なかでも『鋼の錬金術師』『あしたのジョー』『キャプテン翼』が引き起こした出来事は、マンガ史においても特筆すべきケースといえるでしょう。
人気ダークファンタジー『鋼の錬金術師』(作:荒川弘)は、シリーズ累計発行部数8000万部を突破し、スクウェア・エニックス発行のマンガ史上、もっとも売れた作品として知られています。
その人気ぶりは凄まじく、最終話が掲載された「少年ガンガン」2010年7月号は、通常の2割増で発行されたにもかかわらず、全国書店で売り切れが続出しました。特別付録として作者のサイン入り卓上時計が付いてきたこともあり、ネットオークションなどでは定価の約6倍というプレミア価格で取引されていたといいます。
出版元であるスクウェア・エニックスにも問い合わせが殺到し、2か月後に発売された同誌9月号では、最終話が再掲載されるという異例の対応が取られました。人気作の最終回掲載号が増刷される例はほかにもありますが、最終話そのものを改めて再録するケースは極めて稀(まれ)です。それだけ本作の人気が、通常の枠組みでは収まりきらない規模に達していたことを物語っています。
累計発行部数2500万部を誇るボクシングマンガ『あしたのジョー』(原作:高森朝雄、マンガ:ちばてつや)も、当時の人気は凄まじいものでした。なかでも「力石徹」は主人公の「矢吹丈」を凌ぐほどの人気を博し、アニメ化の話が持ちあがった際には、TV局や編集部から「力石は殺さないほうがいいのでは?」という意見も出たといわれています。
しかし彼の行く末は周知の通りで、力石が不慮の死を遂げた際には、現実世界で葬式が執り行われました。実際にはアニメ放送前の宣伝を兼ねたファンイベントでしたが、会場には遺影が飾られ、住職による読経や焼香まで行われるなど、その演出は本格的なものでした。当日は約800人ものファンが詰めかけたそうで、SNSも存在しなかった時代に、これだけの人びとを集めたことからも『あしたのジョー』の人気がいかに突出していたかがうかがえます。
一方で、まだ「Jリーグ」も発足していなかった日本に、空前のサッカーブームを巻き起こした作品がありました。それが『キャプテン翼』(作:高橋陽一)です。
連載が始まった1980年代当時、日本では野球人気が圧倒的で、サッカーはまだマイナースポーツのひとつに過ぎませんでした。しかし『キャプテン翼』の登場によって状況は一変します。
作中で描かれるダイナミックなプレーや必殺シュートの数々は多くの子供たちを魅了し、主人公の「大空翼」や仲間たちのスーパープレーを真似してボールを追いかける少年たちが全国にあふれました。こうしたブームは、1993年に開幕した「Jリーグ」にとっても大きな追い風となったといわれています。
そして、その影響力は日本国内にとどまりません。リオネル・メッシ選手やキリアン・エムバペ選手をはじめ、名だたるプロサッカー選手たちがファンであることを公言しているほか、2001年に始まった『キャプテン翼 ROAD TO 2002』で翼がスペインの名門「FCバルセロナ」に入団した際には、実際に現地で入団セレモニーが開催されました。これを受け、同国のライバルチームである「レアル・マドリード」の幹部が「なぜレアルじゃないのか」と愚痴をこぼしたともウワサされています。
こうしたエピソードの数々を見ても、「マンガ」という存在が社会に与えてきた影響力の大きさは計り知れません。今後、どのような伝説が生まれるのか、注目していきたいところです。
(ハララ書房)
