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「リアル『ギャラリーフェイク』だ」2025年に相次いだ贋作事件 フジタならどう見る?

2025年、徳島と高知の美術館で、所蔵絵画の1枚が相次いで同じ贋作師による贋作と判断されました。リアル『ギャラリーフェイク』ともいわれたこの件、主人公のフジタならどのように見るでしょうか。

天才贋作師が日本の美術館を欺く

「フジタ」こと主人公の「藤田玲司」。画像は2025年2月に発売された最新巻書影。『ギャラリーフェイク』第39巻 作:細野不二彦(小学館)
「フジタ」こと主人公の「藤田玲司」。画像は2025年2月に発売された最新巻書影。『ギャラリーフェイク』第39巻 作:細野不二彦(小学館)

 2025年11月、徳島県立近代美術館が26年前に購入した油彩画「自転車乗り」について、贋作だったと確定し、同美術館が購入先から6720万円の全額返金を受けたというニュースが報じられました。この絵画はフランスの画家ジャン・メッツァンジェの作品とされていましたが、実際にはドイツの有名贋作師ヴォルフガング・ベルトラッキ氏によるものだったというのです。高知県立美術館でも同様に、ベルトラッキ氏による贋作「少女と白鳥」が1800万円で購入されていたことが判明しています。

 この一連の報道を受けて、ネット上では「リアル『ギャラリーフェイク』だ」という声が多数、聞かれました。『ギャラリーフェイク』は細野不二彦氏によるマンガ作品で、1992年から『ビッグコミックスピリッツ』で連載が始まり2005年に一旦完結、のちに復活し、2025年現在は『ビッグコミック増刊』で続編が発表され続けています。

 主人公「藤田玲司」、通称「フジタ」は元メトロポリタン美術館のキュレーターで、「プロフェッサー・フジタ」と称される天才的な審美眼と絵画修復技術を持つ男です。表向きは贋作、レプリカ専門のアートギャラリー「ギャラリーフェイク」を経営していますが、裏では税金逃れの横流し品や盗品などの真作を扱う闇商売も手がけるという、美術界の鼻つまみ者として描かれています。しかし、その本質は単なる守銭奴ではなく、美の探求者、アートへの奉仕者として「美とは何か?」を問い続ける人物といえるでしょう。

●ベルトラッキの手口は「オリジナルの贋作」

 実際のベルトラッキ氏の手口はどのようなものだったのでしょうか。これまでの報道などによると、既存の作品をコピーするのではなく、画家本人になりきって「その画家が描いたかもしれない未発見の作品」を創り出すといいます。

 ベルトラッキ氏は古いキャンバスや(制作年とする)当時の画材を骨董市などで調達し、作品の来歴を示す偽の証明書やラベルまで精巧に作成していました。ナチス時代にユダヤ系画商が秘匿していたコレクションという架空の前歴をでっち上げ、世界的に有名なオークションハウスや鑑定家までをも欺き続けていたといいます。その贋作は少なくとも89点が確認されており、被害額は数十億円とも100億円以上ともいわれています。

 犯行が発覚したきっかけは、絵の具の顔料「チタニウムホワイト」でした。CNNによると、ベルトラッキ氏は絵画偽造用に使っていた白色の絵の具に使用する亜鉛を切らしたため、代用品としてオランダのメーカーから亜鉛顔料を購入します。しかしそのメーカーは、顔料にチタニウムホワイトが含まれていることを開示していなかったのでした。

 そしてベルトラッキ氏はハインリヒ・カンペンドンク作をかたる贋作に、このチタニウムホワイトを含む顔料を使用します。ところが、チタニウムホワイトが絵画の顔料として使用されるようになったのは、その絵の制作年とされた1914年より後のことだったのです。科学鑑定によってこの矛盾が明らかになり、ベルトラッキ氏は2010年に逮捕され、2011年に懲役6年の実刑判決を受けることになりました。

【画像】えっフジタが女性化…? こちらも相当クセ強な「フジタ・レイ」さんです

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