マグミクス | manga * anime * game

「クリエイターを置き去り」で加熱する大手企業のAI投資 キャラや作品の「不正使用」対策はどこまで動いているのか

Googleやエヌヴィデア、Meta(元Facebook)など大手テック系企業によるAIへの大型投資が続いています。5兆円、10兆円という金額が飛び交う「投資戦争」とも呼べる状況となっていますが、なぜ各企業はAIにこれほどの投資を行っているのでしょうか? また、こうしたAI投資のスピードに、著作物に関する権利侵害への対策は追いつけるのでしょうか?

メモリ需要も爆発、データセンターや発電所の建設が続々

OpenAIの画像生成AI「Sora」は、有名アニメ作品などに酷似した動画生成が続出し問題視されている
OpenAIの画像生成AI「Sora」は、有名アニメ作品などに酷似した動画生成が続出し問題視されている

 Googleやエヌビディア、Meta(元Facebook)など大手テック系企業によるAIへの大型投資が続いています。5兆円、10兆円という金額が飛び交う投資戦争とも呼べる状況となり、AIサーバ向けのメモリ需要の高まりから、パソコン製品の高騰が報道で取り上げられ、ゲーム機の値上げのうわさまで飛び交うほどの影響も出ています。

 AIへの投資加熱は勢いを増すばかりです。Googleは2025年11月14日、自社AI「Gemini」運用のために400億ドル(約6.2兆円)を投資すると発表しました。この途方もない金額は、2027年までにアメリカのテキサス州にデータセンターや発電所を建設し、AIが必要とするインフラを整備するために使うとされています。半導体最大手のエヌビディアは「ChatGPT」を開発したOpenAIに対し、データセンター整備に最大1000億ドル(約15兆円)を投資すると発表しています。

 また、かつてFacebookで一世を風靡したMeta(2021年に社名をFacebookよりMetaに変更)も、人工知能データセンターを含むインフラと雇用に今後3年間で少なくとも6000億ドル(約90兆円)を投資すると表明しました。

 日本国内企業ではソフトバンクグループがOpenAIに累計108億ドル(約1兆7000億円)を出資しています。さらなる追加出資も行われており、最大で400億ドル(約6兆円)ほどの金額になる予定です。

 なぜ世界の企業はこれほどの投資を行うのか。一番の理由は、まだAIの世界には「絶対的な覇者」が存在していないからです。

 AIの世界は日進月歩を超えた「秒進分歩」とでも言うべき速度で進化しています。ものすごいAIが出たかと思えば、それを超えるAIがすぐに登場する。資金と人材の確保に失敗した企業から脱落していく過酷な状況ではありますが、競争で生き残り覇者となれば、将来的なAIサービスを一手に担い、莫大な利益を得られるという判断があると考えられます。

クリエイターの権利を守るための「動き」は

 しかしここまで投資を行ったからには、もうどのテック企業も引き下がれません。投資した資金を回収し、出資者に利益をもたらす必要があるからです。データセンターや発電所の建設場所となる地域にとっては大きな雇用を生むため、その地域では歓迎を受けることになるでしょう。

 AIは社会の隅から隅まで浸透しつつあり、既にAIを完全に拒否して生きるのは不可能に近いと言えます。この流れは止まるどころか、さらに加速するのは明白です。AIを利用した行為によって、キャラクターや作品などのIPを保有する企業やクリエイターに対する「権利侵害」は止まることを知らず、しばしば抗議声明が出され、議論を呼んでいます。

 一部のIP保有企業やクリエイターのなかには、AIを活用しつつどのように生き延びるかを考え、実行する動きが出ています。ディズニーはOpenAIへ10億ドル(約1500億円)を出資すると表明し、同社の人気キャラクターを動画生成プラットフォーム「Sora(ソラ)」で使用できる契約も交わしています。

 日本でも、大手声優事務所の81プロデュースがAI音声技術を持つイレブンラボジャパン合同会社と業務提携を行い、声優の声を多言語化する試みを開始します。このように、ただ不正利用を否定するのではなく、自分たちにも利益のある形でAIを活用するという取り組みが、ようやく動き出しました。

 AIでの不正利用が止まらないのであれば、自ら「運用方法」を確定し、正規利用者から対価を受け取り、不正使用者に対しては法的措置を行う……このように「守りながら攻めていける仕組み」を作る動きも、今後ますます必要とされるのではないかと考えます。

(早川清一朗)

1 2

早川清一朗

アニメライター。40年来のアニメ好き&漫画乱読者で、なんとなく始めたライター生活も気付いたら20年以上が経過。別名義でシナリオライターとしても活動中。趣味は釣りと酒に銭湯巡り。大好物は自分で釣ったハゼの天ぷら。

早川清一朗関連記事

もっと見る

編集部おすすめ記事

最新記事

アニメの記事をもっと見る