ずっと「誤解」され続けていた「ザクII」の定義 昭和の緩い空気感が生んだ「罪な機体」とは
宇宙世紀のMSのなかで、現在でも人気のある「MS-06R 高機動型ザクII」は、その名前が「いつの間にか変わってしまった」と思う人が少なからずいます。背景には、昭和ならではの大きな誤解がありました。
当初は浸透しなかった「ザクII」の呼称

「モビルスーツバリエーション(MSV)」といえば、「MS-06R 高機動型ザクII」を思い浮かべる人も多いことでしょう。MSVを代表するMSといえますが、当時の小学生たちの間である誤解を生んだ「罪な機体」でもあったのです。
R型の設定が生まれたのは、1981年に発行されたムック本「宇宙翔ける戦士達 GUNDAM CENTURY」(みのり書房)でした。S型を上回る機動性をもつ「黒い三連星」が使用したエースパイロット専用機と設定されます。この時は文字設定のみでした。
その後、1982年に発行された「SFプラモブック1 機動戦士ガンダム REAL TYPE CATALOGUE」(講談社)で、大河原邦男さんによるデザイン画が発表されます。そして1983年にMSVのラインナップで、初のガンプラ化がされました。
この時の商品名は「1/144 MS-06R ザクII」です。この表記が一部の子供たちが誤解するきっかけとなりました。それは「R型こそがザクII」という認識です。
当時を知らない世代にはピンと来ないかもしれません。簡単にいえばザクIIという名称は、それほど当時は認識されておらず、R型が強化型ということもあって、通常のMS-06がザクで、R型だけがザクIIだと誤認するきっかけになりました。
これにはいくつかの伏線となるものがあります。それは同じMSVである「MS-06K ザクキャノン」や「MS-06D ザクデザートタイプ」と違い、R型に固有名詞がなかったことと、前述したようにザクIIという言い回しが浸透しなかったことが要因です。
このザクIIという名称は前述の「ガンダムセンチュリー」で発表されたもので、当時は版元である「日本サンライズ(現、サンライズ)」はほとんど使っていません。そういう点では「知る人のみ知る」的な造語でした。
しかしMSVが展開する際、基本設定にガンダムセンチュリーを組み込んだことで、ザクIIが急速に浮上します。そして、R型のガンプラ商品化で初めて、ザクIIは一般に浸透した言葉となりました。
この誤解を増長することになったのが、その後の商品展開でしょう。以降のMSVのガンプラでR型にのみザクIIという名称が使われる一方、F型のバージョン違いである「1/144 MS-06F ザクマインレイヤー」では、ザクIIでなく「ザク」と表記しています。
こうしたことから「R型=ザクII」と思い違いをする人がいても仕方ありません。しかも、この表記揺れは数年にわたって続くことになりました。




