ずっと「誤解」され続けていた「ザクII」の定義 昭和の緩い空気感が生んだ「罪な機体」とは
MS-06Rが高機動型になった時期とは?

筆者が確認したところですと、この表記揺れは『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』(1988年)の時代まで続いていました。
それは「SDガンダム」ブームのきっかけとなった「カードダス」です。このパート1で「MS-06 ザク」がカード化されましたが、パート3では「MS-06R-1A ザクII」がカードになりました。
この表記揺れは最終弾となるパート13まで続き、この弾で登場した『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』(1991年)の「MS-06F2 ザクII」により、ようやくF型がザクIIという認識を得るに至ります。
ここまで長い間、表記揺れを続けてきたことで「いつの間にかR型以外もザクII
になった」と誤解する人が現れたのでしょう。それではR型が高機動型となったのはいつからでしょうか。筆者の調査では確証を得られませんでしたが、ひとつの可能性を見つけました。
筆者の調査では1984年発行の「モビルスーツバリエーション(1)ザク編」(講談社)に、R型を高機動型と併記する部分があります。この本は「コミックボンボン」編集部によるもので、構成はMSVの生みの親である小田雅弘さんでした。
これらのことから推測すると、MSVの企画を立ち上げた小田さんたちは当初からR型を高機動型と認識していたが、メーカー側が理解できていなかったと考えられます。
ちなみに同時期にバンダイで発売していた小冊子「模型情報」や別冊の「MSVハンドブック」では、MS-06がザクIIと表記されていましたが、MS-06RはRタイプやR型としか記載されていません。
おそらく昭和ならではの緩い空気感が、R型の名称を誤解させていたのでしょう。昨今の厳しい版元チェックがなかった時代の生んだ誤解だったというわけです。
(加々美利治)




