マグミクス | manga * anime * game

「キラータイトル不足」のスイッチ2、『ゼルダ』リメイクを打ち出す任天堂の「真の狙い」とは?

「ゼルダの伝説」シリーズは、『ブレス オブ ザ ワイルド』『ティアーズ オブ ザ キングダム』で、ユーザー層が大きく広がりました。その熱を途切れさせないために、任天堂は『時オカ』というシリーズ屈指の名作を選んだのかもしれません。

狙いは古参ファンだけではない? 「真のターゲット」とは

スイッチ2版『ゼルダの伝説 時のオカリナ』の詳細は、まだ一切が不明。続報が待たれる  (C) Nintendo
スイッチ2版『ゼルダの伝説 時のオカリナ』の詳細は、まだ一切が不明。続報が待たれる  (C) Nintendo

 Nintendo Switch 2(以下、スイッチ2)は発売以降、順調な立ち上がりを見せています。しかしその一方で、「独占タイトルの不足」という課題も指摘されてきました。そうしたなかで行われた2026年6月9日の配信番組「ニンテンドーダイレクト」には、大型独占タイトルの発表によって流れを変えるのではないかという期待が集まっていました。

 しかし実際は、「マリオ」シリーズの完全新作や「大乱闘スマッシュブラザーズ」シリーズなど大型タイトルの新展開はなく、『ゼルダの伝説』シリーズについても、『ゼルダの伝説 時のオカリナ』(以下、時オカ)のリメイクと思われるタイトルが発表されるにとどまりました。

 一部では「新作ゼルダを期待していたのに」といった落胆の声もあがりました。しかし、スイッチ2を取り巻く状況を踏まえると、リメイク版『時オカ』の投入は、まさに今タイミングが適切とも考えられます。

「初代スイッチ」の成功を支えた「キラータイトル」

 ゲームハードの歴史を振り返ると、ゲーム機本体と一緒に購入したくなるほど大きな需要を集めるゲーム、いわゆる「キラータイトル」が、その成否を大きく左右してきました。前世代機のNintendo Switch(以下、スイッチ)も例外ではありません。

 スイッチは2016年の発売と同時に『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』(以下、BotW)が登場し、大きな話題を呼びました。その後も『マリオカート8 デラックス』『スーパーマリオ オデッセイ』『スプラトゥーン2』といった強力なタイトルが相次いで投入され、発売1年目から非常に豪華なラインナップが揃っていました。

 もちろん、スイッチ2にも成功の兆しは見えています。同日発売となった『マリオカート ワールド』は1,470万本という驚異的な販売本数を記録し、『ドンキーコング バナンザ』は452万本、『Pokemon LEGENDS Z-A Nintendo Switch 2 Edition』も394万本を売り上げました。いずれも十分な成果です。

 しかし、「スイッチ2でしか遊べない」という独占タイトルは、まだ決して多くありません。また、かつての『BotW』級のインパクトを持つ作品を求めていた人も少なくないでしょう。

『ゼルダ』大型新作は、時期的にまだ先か

 もちろん任天堂も、可能であれば大型新作を次々にリリースしたいはず。しかし、近年は開発費や人件費の高騰が続いており、AAA級タイトルの開発期間も長期化しています。

 実際、『BotW』から続編となる『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』(以下、TotK)の発売までは、約6年を要しました。同程度の期間が必要だと仮定すると、2023年発売の『TotK』に続く大作級の完全新作は、2029年頃になる可能性も十分考えられます。

『BotW』は3,384万本、『TotK』は2,256万本という世界的なヒットを記録し、従来のシリーズファンだけでなく、多くの新規ユーザーを獲得しました。しかし、新たな『ゼルダ』作品が長期間登場しなければ、せっかく増えた新規ユーザーがシリーズから離れてしまう恐れがあります。

 その事態を回避するには、次の大型『ゼルダ』までの空白期間を、『ゼルダ』関連作品で埋めなければなりません。そこで白羽の矢が立ったのが、『ゼルダの伝説』シリーズ初のスイッチ2独占作品となる『時オカ』のリメイク版なのでしょう。

 ちなみに、シリーズ作でいえば『ゼルダの伝説 知恵のかりもの』が2024年に発売されており、遊び応えのある良質な作品でした。しかし、描画表現やゲーム性の方向が『BotW』とは大きく異なっていたため、2025年5月発表の販売本数は409万本ほどです。1タイトルとしては十分な成果ですが、『BotW』によって広がった新規ユーザー層にはあまり届いていないことも、各販売本数の比較でうかがえます。

「3Dゼルダ」のファン層をつなぎとめるのに最適?

2011年のリメイク版『ゼルダの伝説 時のオカリナ 3D』(任天堂)
2011年のリメイク版『ゼルダの伝説 時のオカリナ 3D』(任天堂)

『ゼルダの伝説』シリーズは、初代作品の時点で2Dアクションアドベンチャーゲームの面白さを構築し、スーパーファミコン時代の『ゼルダの伝説 神々のトライフォース』で頭ひとつ抜けた完成度を見せました。

 そうした偉大な作品に続き、シリーズの転換点となったのが、1998年に発売された『時オカ』です。シリーズ初の本格的な3D作品として登場した本作は熱烈な支持を集め、「3Dゼルダ」という新たな流れを確立しました。シリーズはその後、「2Dゼルダ」と「3Dゼルダ」というふたつの流れに分かれて進化を続けていきます。

『BotW』や『TotK』は、3Dゼルダの系譜に名を連ねる最新作です。そして、その道筋をさかのぼると、『時オカ』にたどり着きます。『BotW』や『TotK』へと続く、3Dゼルダの原点ともいえる存在です。

『BotW』や『TotK』で増えた新規層を意識するなら、やはり「3Dゼルダ」を投入するのが自然な選択です。しかし前述の通り、完全新作をいますぐ用意するのは難しい状況にあります。

それならば過去作のリメイクが候補となりますが、『ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス』はWii UでHD版が発売され、『ゼルダの伝説 スカイウォードソード』もスイッチ向けにリマスターされました。『風のタクト』以降のトゥーンリンク作品も高い人気を誇りますが、『BotW』や『TotK』から入った新規層にどれだけ響くかは未知数です。

 その点『時オカ』は、2011年にリメイクされたものの、すでに15年近く前の作品です。また、2011年のリメイクはニンテンドー3DS向けだったため、「現代基準の映像で生まれ変わり、大画面で楽しめる『時オカ』」は、まだ誰も体験したことがない未知の領域です。

『時オカ』は、『BotW』や『TotK』につながる3Dゼルダの原点であり、シリーズの転換点となった歴史的名作です。そして、大画面向けでは初の本格リメイクになる可能性が高いとなれば、このタイミングに投入する『ゼルダ』作品として、『時オカ』ほどふさわしいタイトルは他になかなかありません。

『BotW』や『TotK』でシリーズに触れた新規ユーザーにとっては、3Dゼルダの原点を知る絶好の機会になります。また、往年のファンにとっても、大画面かつ高画質でもう一度名作を遊べるチャンスです。その両方に訴求できるポテンシャルを考えれば、任天堂が『時オカ』を選んだのもうなずけます。

独占タイトル不足の解消へ向けた布石?

『時オカ』のリメイクが『BotW』や『TotK』並みの訴求力を発揮するかは、結果を見るまで分かりません。しかし、「今のスイッチ2に必要な『ゼルダの伝説』は何か」という問題の答えとして、今回の発表には任天堂なりの意気込みと説得力が感じられます。

 また、今回のニンテンドーダイレクトでは『時オカ』だけが目玉だったわけではありません。完全新作の『ゼノブレイド ジェネシス』をはじめ、『ファイアーエムブレム 万紫千紅』の発売日決定、『ダスクブラッド』のネットワークテスト実施など、見逃せない情報が相次ぎました。さらに、『Star Fox』や『スプラトゥーン レイダース』の発売も近づいています。

 発売からまだ1年あまりのスイッチ2は、まだしばらく「キラータイトル不足」という課題と向き合うことになりそうです。しかし任天堂も、その問題を放置しているわけではありません。『時オカ』リメイクをはじめとする独占タイトル群が、スイッチ2の魅力をどこまで押し上げるのか。その成果に期待しながら、今後の展開を見守りたいところです。

(臥待)

【画像】「えっマジか」「気になる…」これが『ゼルダ』映像でファンがザワついた「新たな演出」です(4枚)

画像ギャラリー

臥待

雑食系ゲームライター。ファミコン時代のクラシックゲームから現行機まで幅広くアクセスし、TRPGやゲームブックなどアナログ系にも手を出しながら、様々な「面白さ」の探求を日々続ける雑食系ライター。「「隠れた名作」を隠れさせることなく広く知らしめたい」という密かな野望を持っており、ユニークな依頼を万年受付中。

臥待関連記事

もっと見る

編集部おすすめ記事

ゲーム最新記事

ゲームの記事をもっと見る