『ウルトラセブン』5話は脚本が崩壊? 話をつなぐ「重要セリフ」カットのワケは
『ウルトラセブン』の第5話を見直すと「あれ?」と思う場面があります。台本がおかしいのです。その理由を解説します。
「あんなこと」ってどんなこと? 編集でそこカットしちゃダメ!

特撮面のみならず、ストーリー面においても評価の高い『ウルトラセブン』ですが、尺調整の関係で、セリフやナレーションがカットされることもしばしばでした。
例えば第1話「姿なき挑戦者」においては、ウルトラ警備隊の「キリヤマ隊長」が、ピンチを救ってくれた幻のヒーローに、「ウルトラセブン」と名付けるシーンが用意されており、実際に撮影も行われたのですが、尺調整の都合でこの場面はカットされました。
確かにメイン視聴者層である子供らの多くは、ウルトラセブンという名称がいつ発生したかは、さほど気にしないでしょう。とはいえ、なかにはストーリーの流れが成立しなくなる編集が施されている回もあるのです。
それは第5話「消された時間」です。ウチワエビによく似た「ビラ星人」が登場した回でもあります。
第5話では、ビラ星人が、天才科学者「ユシマ博士」の心を操り、地球制服を企みます。その事実を知らぬ「モロボシ・ダン」は、博士を基地までポインターで護送している際に、次のように独白します。
「この男、本当にユシマ博士なのだろうか? いや、間違いない。前に写真で見たことがある。しかし、なぜ、あんなことを言ったのだろう。」
このセリフに、違和感を覚えたという人も多かったのではないでしょうか。何せ、ダンのいう「あんなこと」が、何を指すのかが、視聴者にはまるで分からないのです。
それもそのはずで、該当のセリフが登場する直前のシーンが、丸ごとカットされていたのです。(ビラ星人に操られた)ユシマ博士は、宿泊先のホテルに迎えにきたダンに対して、
「昨夜は宇宙人の夢を見たな。地球防衛軍に一人だけ宇宙人がまぎれこんでいてね。そいつが僕の仕事を邪魔するんだよ」と、挑戦的なセリフを投げかけていました。しかし、編集の都合でこのシーンはカット。結果として、ダンの唐突なモノローグが現在まで残っているのです。
大人の鑑賞に耐えうる特撮作品と評される『ウルトラセブン』において、このような隙(すき)が発生したのは意外です。では、なぜこのシーンがカットされてしまったのでしょうか。
可能性として指摘されているのが、「特撮シーンが長引いたため」という理由です。実際、円谷プロは編集時点で特撮場面が長引くと、本編(ドラマ)を削ることが、よく行われていました。
おそらくは今回もそうだったのでしょう。やや強引ではありますが、円谷プロの特撮への矜持(教示)も感じさせます。実際、ビラ星人とウルトラセブンの格闘シーンは、傑作なのです。
稲荷神社を思わせる真っ赤な鳥居が連なった、日本の原風景を思わせるセットに、操演技術でぐよぐよと蠢(うごめ)くビラ星人、そして雄々しくたたずむウルトラセブンが対峙します。さらにその上空ではビラ星人の宇宙船と、ウルトラホークが、激しい空中戦を繰り広げるのです。
古(いにしえ)の日本と近未来SFが融合した世界で、セブンはビラ星人をアイスラッガーで一刀両断するのでした。この見事な特撮を前にしたら、もう先ほどの台本への違和感など、吹き飛んでしまうのです。
ドラマ面も高い評価を得ている『ウルトラセブン』ですが、大前提になっている特撮の美しさを再確認させてくれるエピソードと言えるでしょう。
(片野)
※参考書籍:『ウルトラセブンの帰還』(白石雅彦)

