『ウルトラセブン』ダンは「準隊員」のはずだった? 第1話が強引展開になった「予想外の出来事」とは
『ウルトラセブン』主人公のダンは一般人からいきなりウルトラ警備隊員になっています。「ダンは長官推薦でいきなり正隊員になってしまう。本当だったら、他の大勢の地球防衛軍の隊員からやっかみをうけたのではないだろうか……」森次晃嗣さんは、そう話しています。
よく見ると展開が「強引」だった第1話

『ウルトラセブン』第1話で、主人公モロボシ・ダンは、一般人でありながら異星人との戦いに貢献したことから、いきなりウルトラ警備隊の正隊員になります。特撮ドラマではよく見かける展開ですが、実は当初、ダンはこんなに簡単に入隊する予定ではありませんでした。いま見るとやや「強引」に見える展開の裏には、制作上の事情があったのです。
『ウルトラセブン』は1967年6月頃から制作がスタートし、第1?5話を同時進行で撮影する形で動き始めました。プロット段階では、モロボシ・ダンは「ウルトラ警備隊の準隊員でポインターの運転手」という設定で、若く未熟な青年が戦いを通して成長し、やがて正隊員を目指していく物語になる予定でした。
ところがここで思わぬ問題が発覚します。ダン役の森次晃嗣さん(当時24歳)が、自動車の運転免許を持っていなかったのです。役が決まってから教習所に通い始めたものの、撮影には間に合いませんでした。
このため脚本の見直しを余儀なくされ、物語の流れに多少の無理が生じることになります。
例えば、第1話中盤では、宇宙船からの攻撃を受けてソガ隊員とフルハシ隊員が負傷したため、出会ったばかりのダンにポインターの運転を任せる場面があります。しかし普通に考えれば、正体も分からない人物に特殊車両の運転を任せるのは不自然です。もし当初の設定どおり、ダンが運転手として同行していたのなら、もっと自然な流れになっていたでしょう。
また基地内では、ダンが「敵の宇宙船に特殊噴霧装置を使うべきだ」「科学班の協力があればすぐ作れる」といった作戦を提案します。これも内部事情を知っているかのような発言です。もちろん彼の正体は「セブン」ですから未知の能力はあるでしょうが、視聴者から見るとダンの怪しさが際立つ場面です。他の隊員や幹部も信用しすぎですよね。
その後、この作戦の実行にあたりダンには臨時隊員の資格が与えられ、最終的には功績を認められて正式なウルトラ警備隊員となります。最後までやや強引な展開ではありますが、地球を救った人物ですから、視聴者としては納得してしまう部分ではあるでしょう。
撮影現場でも「苦労」が生じて…?
ちなみに初期の映像でも、ダンがポインターを運転しているように見えるシーンは数多く登場します。しかし実際には、森次さんが運転しているわけではありません。森次さんは後年のインタビューで、次のように語っています。
「車から僕が降りるカットは、みんなで車を押して、ブレーキだけ踏んで降りてくるという形で撮影していました。ポインターのシーンは多かったので、スタッフ泣かせだったみたいです」。ポインターは、クライスラーの1957年製インペリアル・サザンプトンをベースに改造された車で、実際の重量は2トン近くあったといわれています。
番組制作の裏側には、こうした予想外のトラブルに対応するスタッフの苦労がありました。そうした事情を踏まえて見直してみると、特撮ドラマの「多少強引で都合がよすぎる展開」もまた、作品の魅力のひとつだと思います。
(玉城夏)


