「シッカリがんばらないと負けるぞ」 ウルトラマン演者たちがショックを受けた初期の名シーンとは?
子供番組とはいえ、一切手は抜かない…『ウルトラマン』の特撮班の意気込みが、演者に一瞬で伝わった、伝説のシーンがあります。
お前ら廊下に並べ! 思わずムラマツキャップが科学特捜隊に檄!

1966年『ウルトラマン』は、子供をメインターゲットにした番組でした。しかし、それは「手抜きで良い」というわけではありません。むしろ、全くの真逆を意味します。
「ウルトラマン」や怪獣、宇宙人、ミニチュアの街、こうした「偽物」を「本物」と子供らに思わせるためには、知識や技術に加え、情熱と体力、その全てが結集しなくてはならなかったのです。
円谷プロをはじめとする製作陣の熱き思いが、『ウルトラマン』の演者たちに「一瞬」で伝わった伝説のシーンがあります。何せこのシーンを観た瞬間、科学特捜隊の「ムラマツキャップ」を演じていた小林昭二さんが、他の科学特捜隊メンバーを全員廊下に呼び出したのです。そして、
「あのな、特撮が、あんな素晴らしい仕事をしているんだぞ!俺たちも子供番組と思わないでシッカリがんばらないと負けるぞ」
こう檄を飛ばしたのでした。「負けるぞ」という言葉からも、そのシーンが演者の矜持をも喚起させたことがうかがえます。
この言葉に、「ハヤタ隊員」を演じた黒部進さん、「フジ隊員」役の桜井浩子さん、「アラシ隊員」役の石井伊吉(現:毒蝮三太夫)さん、「イデ隊員」役の二瓶正也さん、全ての科学特捜隊メンバーが大きくうなずいたのでした。
その場面とは、かの有名な「バルタン星人の分身シーン」です。
今もなお『ウルトラマン』といえばこれ、とも言えるアイコニックな場面でした。放送順では第2話ですが、制作順でいえばこの「侵略者を撃て」は記念すべき1回目の撮影だったのです。
この「分身シーン」は、CG技術が進んだ現在から見れば、クラシカルな映像に映るかもしれません(それでも今見てもなお美しいのですが)。ただ、この当時の最新光学合成技術を駆使した魔法のような映像美に、演者陣は漏れなく魅せられたのでした。
『ウルトラマン』はオールアフレコであり、演者陣はみんな撮影後に改めてセリフを吹き込みます。そのため、出演者がこの分身シーンを観たのは、アフレコの現場が初でした。当時の衝撃を、桜井さんは次のように述懐しています。
「あの分身シーンは、とても美しく斬新でした!まるでバレエのワンシーンのような雰囲気でしたね」
初現場で、俳優たちが『ウルトラマン』への向き合い方が定まり切っていない状態だったからこそ、あの「分身シーン」は如実に刺さったのでしょう。
科学特捜隊を「本気」にさせたのは、やはりバルタン星人でした。あのシーンで、役者魂に火がついたからこそ、『ウルトラマン』は60年間も愛され続ける傑作となったのです。ありがとう、バルタン星人!
参考書籍:「『ウルトラQ』『ウルトラマン』全67話撮影秘話 ヒロインの記憶」(著:桜井浩子、青山通/アルテスパブリッシング)
(片野)

