『ガンダム』知るほど答えに窮する「ジオング」のコックピット問題 頭だけちゃうの?
シャアがジオングに乗り込む際の描写が、すべての発端です。複座説、移動説、入口説と仮説を重ねるほどに、答えは遠ざかっていくように見えます。
言われてみれば…あの人、いつ移動したん?

『機動戦士ガンダム』に登場する「ジオング」は、ジオン公国軍がア・バオア・クーの最終決戦に投入した、ニュータイプ専用のモビルスーツ(MS)です。
脚部を持たない独特のシルエットのこの機体で、同じくらい特徴的なのがコックピットの位置といえるでしょう。頭部に設けられたコックピットは機体から切り離して単独行動が可能な設計で、ビーム砲も備え、脱出ポッドとしてはもちろん、そのまま戦闘を継続することもできました。
ところがTV版、劇場版ともに、「シャア・アズナブル」がジオングに搭乗する際は、胸部のハッチから乗り込んでいるように見えます。どういうことでしょうか。
これについては、おもに3つの説が考えられるでしょう。すなわち、「胸部と頭部の2か所にコックピットがある」とする複座説、「胸部で乗り込んだのち、コックピット部分が頭部へ移動する」とする移動説、そして「胸部ハッチは単なる入口で、機体内を移動して頭部コックピットに乗り込む」とする入口説の3つです。
コックピット移動説は、描写上の矛盾こそ解消できますが、リアルロボット路線の作品においてそのようなギミックが設けられるかという点で、リアリティに欠けるといえるでしょう。胸部ハッチ入口説については、TV版、劇場版いずれの映像でも胸部ハッチの内部にシートらしきものが明確には確認できないものの、では機体内にそのような移動経路を設ける理由がどこにあるのか、という疑問がぬぐえません。
そして複座説については、2002年7月に発売されたプラモデル「MG 1/100 ジオング」(BANDAI SPIRITS)の取扱説明書に、頭部を「火器管制およびサイコミュ用コクピット兼脱出装置」、胸部を「機体制御用のコクピット」という記述が見られます。ニュータイプ能力のないパイロットが搭乗する場合は胸部で機体を制御し、頭部にはガンナーが搭乗してオールレンジ攻撃端末をマニュアル操作する、という運用まで想定されています。
ただし、これが「公式設定」かどうかとなると、お話がやや複雑になります。ガンダムシリーズのファンのあいだには、映像化されたアニメ本編のみを公式と見なす考え方が根強いからです。講談社刊の『ガンダム事典』も複座構造を支持する内容ですが、こちらも同様の議論が当てはまるでしょう。
さらにお話を複雑にするのが、同じく講談社が1984年に刊行した「MSV モビルスーツバリエーション1 ザク編」です。同書にはジオングのコックピットについて「それまでのモビルスーツでは胸部にあったコクピットを頭部にうつし」と、頭部1か所であるかのように記されています。同じ出版社の書籍どうしでさえ一致しないのです。
仮に複座説を採るとして、シャアはいつ、胸部コックピットから頭部コックピットへ移動したのか、という疑問も残ります。激しい戦闘のさなかに移動したとは考えにくく、本編中に描写のあるノーマルスーツへの着替えのタイミングで移動したとする意見も見られますが、それを裏づける明確な描写はどこにも見当たりません。
このようにいずれの説も決め手に欠けるため、長年にわたりもっとも有力とされてきた結論は「作画、ないし設定ミス」というものです。知れば知るほど、その結論に落ち着きがちになってしまうのは、なんだかなぁ、という感じですね。
(マグミクス編集部 ガンダム担当)

