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バロンは有名だけど 『耳をすませば』から『猫の恩返し』につながる重要な「ネコたち」とは

スタジオジブリは、あえて続編を作らないとよく言われますが、このふたつの作品はゆるくつながる珍しい関係にあります。

猫たちが伝えてくれるつながり

『耳をすませば』場面カット (C)1995 Aoi Hiiragi, Shueisha/Hayao Miyazaki/Studio Ghibli, NH
『耳をすませば』場面カット (C)1995 Aoi Hiiragi, Shueisha/Hayao Miyazaki/Studio Ghibli, NH

 2026年5月1日(金)、「金曜ロードショー」で『耳をすませば』が放送されます。小説家を目指す中学生「月島雫」と、バイオリン職人を目指す青年「天沢聖司」の甘酸っぱい青春物語です。

 その1995年公開の『耳をすませば』は、2002年公開の『猫の恩返し』と関係があることを知るファンは多いでしょう。『猫の恩返し』の物語は、『耳をすませば』の「月島雫が創作した物語」ということが広く知られています。

 同作は宮崎駿監督のリクエストをうけて、『耳をすませば』の原作マンガの作者・柊あおいさんが描き下ろしたコミック『バロン 猫の男爵』を原作としており、スタジオジブリの公式サイトでは「柊さんは『「耳をすませば」の主人公・雫が書いた物語という設定で描きました』と語っています」と説明されていました。

 直接の続編ではなく、いわゆるスピンオフ作品とされ、現実に根ざした青春ドラマである『耳をすませば』に対し、『猫の恩返し』が完全な異世界ファンタジーというのも雫の発想力が知られる面白いポイントです。

 ふたつの作品を分かりやすく結びつけているのが、猫のキャラクターたちでした。『耳をすませば』で雫が地球屋で出会う「バロン」は、凛とした姿の猫の人形として登場します。

 雫はこのバロンに心を奪われ、彼を主人公にした物語を書こうと決意しました。そして『猫の恩返し』では、このバロンが物語の世界のなかで本当に動き回る猫の紳士として、大活躍します。現実世界では飾り棚のなかの人形だったバロンが、雫の物語では、困っている少女を助ける頼れるヒーローになっているのです。

 さらに、『耳をすませば』で雫を地球屋へ導く、巨漢ネコ「ムーン」も重要な存在でした。『猫の恩返し』では、よく食べてぶっきらぼうな「ムタ」として、猫の国への案内役のような立場で、主人公「ハル」を支えます。

 同じような見た目の猫が、片方では気ままな野良猫として、もう片方では口は悪いけれど頼りになる相棒として描かれていました。この違いを「雫がムーンという存在をどう物語に変えたのか」という視点で眺めてみると、両作の関係がぐっと立体的になってきます。

●雫の「初めての創作ドラマ」を知っておく

『耳をすませば』は、中学生の雫が初めて本気で物語を書こうとする姿を追った作品でもあります。図書カードを見て同じ本を借りている男の子を気にしたり、将来の夢についてぶつかり合ったりしながら、雫は自分が何をしたいのかを真剣に考え始めました。

 物語の中盤からは、雫が机に向かい、寝る時間も削って原稿に取り組むシーンが続きます。思うように書けず落ち込んで涙をこぼす場面や、ようやく書き上げた原稿を抱えて地球屋に駆け込む場面は、とても印象的です。

 この一連のドラマを知ってから『猫の恩返し』を見ると、あのにぎやかな猫の国の冒険が、雫の努力と成長の先にある1本の作品のようにも見えてきます。明るくテンポのよいストーリー展開も、「読む人を楽しませたい」という工夫が重ねられているようにも感じられるでしょう。

 ふたつの映画には、テーマの面でも共通点がありました。『耳をすませば』では、自分の才能に自信が持てない雫が「今の自分は未熟だけれど、それでも全力でやってみたい」と覚悟を決めていきます。将来への不安を抱えながらも、一歩を踏み出す物語です。

 一方、『猫の恩返し』のハルもどこか自信がなく、流されがちな高校生として描かれます。猫の国での騒動を通して、彼女は最終的に「自分のままでいい」と自分の生き方を選び取っていきました。

 こうした共通点を見ていくと、『猫の恩返し』の物語には、『耳をすませば』で雫が向き合っていた迷いや不安が、どこか形を変えて表れているようにも感じられます。そして、自分に向けられていたまなざしが、誰かを励ます方向へと広がっているようにも見えるのです。

 その視点で見ると、ハルがラストで感じる解放感や自分の生活に戻っていく姿は、雫からのエールのように響いてきます。このささやかなつながりを意識しながら、映画を楽しんでみてください。

(石原久稔)

【画像】え、比較するとだいぶ「色合い」「目付き」違う? コチラが『猫の恩返し』の方のバロンのビジュアルです

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