大ヒットアニメ「続編決定」も、放送未定が続くワケ 背景にある「構造的問題」は?
近年は人気のある原作を数期にわたってアニメ化する企画が主流となるなか、突発的に人気を獲得した一部のアニメは、「2期」以降の放送にこぎつけるのが難しくなっています。その背景には、業界の構造的問題が見えてきます。
「続編」発表から1年以上、具体的情報がないケースも

近年のTVアニメは、人気のある原作を数期にわたってアニメ化する形の企画が多くなっています。その一方、突発的に人気を獲得したTVアニメは、「2期」以降、あるいは新作の企画が発表されるも、放送時期に関する正式発表がないまま年月が過ぎ、ファンは首を長くして情報を待ち続ける……というケースがあります。なぜなのでしょうか?
2026年に入ってからも、『葬送のフリーレン』や『メダリスト』といった原作付きアニメの2期が放送され、視聴者の注目を集めています。人気のある原作をアニメシリーズとするのは、アニメ黎明期から行われている手法であり、かつてはオリジナルストーリーが加えられることが多かったものの、現在では原作に忠実な形で制作される作品が増え、高い確率でヒット作を生み出す手法として定着しています。
ところが、おそらく最初からシリーズ継続を想定していないであろうと思われる作品が大ヒットとなった場合、それに続く2期や劇場版といった展開が難しくなっているように思えます。代表的な例として挙げられるのが、2022年10月から放送され大ヒットした『ぼっち・ざ・ろっく』(以下、ぼざろ)です。主人公の後藤ひとりが紆余曲折を経て仲間たちとバンドを組み、ギタリストとして躍動する姿は、多くの人の心をつかみました。
2024年には総集編としての劇場版が前後編にわたって公開され、2025年2月には「2期」の制作が発表されましたが、2026年3月になった現在も、放送時期などについての発表はありません。かなり順調に進んでいる方だとは思いますが、最初からシリーズ継続を含めた企画と思われる作品と比べると、時間のかかり方に差があるように感じます。
なぜ「2期」放送までに間が空いてしまうのか。この理由は、優れた作品を手掛けるメインスタッフが「引っ張りだこ」どころか、「先々までスケジュールが決まっている」点が大きいと思われます。特に『ぼざろ』1期の斎藤圭一郎監督は『葬送のフリーレン』1期で監督を、2期では監督協力をつとめて多忙を極めているためか、『ぼざろ』2期では山本ゆうすけ氏が監督を務めると発表されています。
また、『ぼざろ』1期で脚本を担当した吉田恵里香氏は、NHK連続テレビ小説『虎に翼』を担当し一躍脚光を浴びました。2027年公開予定の劇場版『虎に翼』でも引き続き脚本を担当するなど、やはり多忙と思われます。他にも『ぼざろ』1期には優れたクリエイターが多数参加しており、いま改めて見ると奇跡のような陣容となっています。数年経ってから同じメンバーを集めるのは容易ではないことが明らかです。

オリジナルアニメはさらに状況が深刻です。2022年に放送され高い人気を獲得した『リコリス・リコイル』は、2023年に新作アニメーションの制作決定が発表されました。2025年には全6話のショートムービー『リコリス・リコイル Friends are thieves of time.』が配信されましたが、別枠で制作されているとされる新作アニメーションについては情報がありません。
10年20年越しの新作公開に歓喜することも多い昨今、個人的には3年4年と待ち続けるのにも慣れてしまいましたが、やはり辛抱できません。錦木千束と井ノ上たきなの、強烈かつ迅速な供給をお願いできればと思います。
他にも、制作が発表されたもののその後の発表がない作品や、クオリティアップのために放送時期を変更する作品もしばしば見られます。それぞれに事情はあるでしょうが、その多くが人手不足を原因としている可能性は高いでしょう。現場は新人の育成についてもさまざまな試みを重ねており、過去と比較すれば待遇も向上しています。
日本政府は現在、アニメを含むコンテンツ産業を「基幹産業」と位置づけていますが、こうした現場の動きを支援することこそ、国の役割のはずです。かつて実施された「クールジャパン戦略」は投資先の赤字が重なり、356億円(2023年時判明額)の税金が消滅する悲惨な状況となりました。もしこのお金が現場に回っていれば、人手不足もある程度は解消されていたはずです。
せっかくファンがついたアニメ作品も、「2期」の制作が遅れれば遅れるほど、企画やビジネスを継続する難易度は上がっていくでしょう。今後は投資先を厳密に選定し、アニメ業界の収入平均値を引き上げつつ、すぐれた作品が最適な形で世に出ていくような政策をお願いしたいところです。
(早川清一朗)


